「お申し付けください」は目上に失礼?上司・取引先・お客様別の使い方と例文
取引先へのメールを締める直前、「修正点がございましたら、お申し付けください」と入力した。ところが送信ボタンを押す前に、「申す」は自分をへりくだる言葉なのに、相手の行為に使ってよいのだろうか、と手が止まる。
答えは明確です。「お申し付けください」は、お客様や取引先、上司など目上の人にも使える敬語で、失礼にはあたりません。
ただし、正しい敬語なら、どこで使っても自然に聞こえるわけではありません。お客様にはなじむ一方、毎日話す直属の上司には接客のように響くことがあります。伝えてほしい内容が「指示」「連絡」「質問」と決まっているなら、言葉を具体化したほうが相手も迷いません。
誰に、何を、どの範囲まで頼んでほしいのか。その三つが見えると、「お申し付けください」を使うべき場面も見えてきます。
「お申し付けください」は目上に失礼ではない
お客様・取引先には正しい敬語として使える
「お申し付けください」は、「要望や注文、依頼があれば伝えてください」という意味の敬語です。
相手から希望を伝えてもらい、自分側で対応する場面に合います。店舗やホテルで注文を受ける時だけでなく、取引先から資料の修正や追加の依頼を受ける時にも使えます。
ご希望の配送時間がございましたら、ご注文時にお申し付けください。
資料の修正点がございましたら、担当者までお申し付けください。
「言ってください」より改まった表現なので、目上の人に使っても失礼にはなりません。むしろ、相手の要望を受ける姿勢が伝わる言い方です。
上司にも使えるが、社内では硬く響くことがある
上司に対する「お申し付けください」も、敬語としては誤りではありません。
たとえば、役員を案内する担当者が「必要な資料がございましたら、お申し付けください」と伝える場面なら自然です。秘書や運営担当など、相手の要望を受ける役割もはっきりしています。
一方、直属の上司との日常会話では距離が生まれることがあります。
何かあれば、お申し付けください。
丁寧ではあるものの、何を伝えればよいのかが曖昧です。仕事の進め方を確認したいなら、「追加のご指示があれば、お知らせください」のほうが具体的で、社内の会話にもなじみます。
判断基準は相手の地位より「要望を引き受ける立場か」
同じ相手でも、場面が変われば自然な表現も変わります。
| 相手 | 敬語として | 自然さ | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| お客様 | 問題なし | 非常に自然 | 注文、希望、サービスへの要望 |
| 取引先 | 問題なし | 自然 | 修正、追加資料、納品方法の希望 |
| 上司 | 問題なし | 場面による | 追加業務や要望を受ける時 |
| 同僚 | 誤りではない | やや大げさ | 改まった案内や運営担当としての対応 |
| 部下・後輩 | 通常は不要 | 不自然になりやすい | 「知らせてください」などが自然 |
役職だけを見て決めると、上司には常に使う、お客様には何にでも使う、という判断になりがちです。
見るべきなのは、相手からの要望を自分側で引き受ける場面かどうかです。注文や依頼を受けるなら合います。単に返事や報告を求めるだけなら、別の言葉が適しています。

なぜ「申す」が入っていても誤りではないのか
「申し付ける」は命令や依頼を言い付けること
「申す」が入っているため、自分の行為にだけ使う言葉だと思うかもしれません。
しかし、「申し付ける」は「申す」と「付ける」をその場で組み合わせた表現ではなく、一つの動詞として使われています。
デジタル大辞泉では、「言い付ける」の謙譲語として、用を言い付ける、命令するといった意味が示されています。
出典:デジタル大辞泉
「お申し付けください」で相手に求めているのは、雑談として何かを話すことではありません。注文、希望、仕事など、こちらに対応してほしい内容を伝えることです。
そのため、質問をしてほしい場面まで、すべて「お申し付けください」に置き換えるのは不自然です。
「お~ください」で相手の行為を立てている
「お申し付けください」の主体は、要望を伝える相手です。
「お+動詞の連用形+ください」は、相手の行為を丁寧に促す尊敬表現です。「お待ちください」「お知らせください」と同じ形で、「申し付ける」という相手の行為を立てています。
ここでの「申し付ける」は、「私が申す」という意味ではありません。
文化庁の「敬語の指針」は、「お申し出ください」「お申し込みください」に含まれる「申す」について、謙譲語としての働きは持っておらず、相手側の行為に用いても問題ないと説明しています。「お申し付けください」も同じ考え方で捉えられます。
出典:文化庁
言葉の一部分だけを取り出して「申すは謙譲語だから、目上には使えない」と判断すると、文全体で誰の行為を丁寧にしているのかが抜け落ちます。
実際に、公的機関の案内でも、希望を職員へ伝えてもらう表現として「職員にお申し付けください」が使われています。
在ニューヨーク日本国総領事館の案内にも用例があります。
出典:在ニューヨーク日本国総領事館
「お申し付けください」は二重敬語ではない
「お」と「申す」と「ください」が重なって見えても、同じ種類の敬語を二重に重ねた形ではありません。
「お申し付けください」は、「お~ください」という一つの尊敬表現として働きます。一般的なビジネス文書や接客で使える形です。
ただし、正しい敬語に丁寧な言葉を足し続けると、読みづらくなります。
重い表現:何なりとご遠慮なくお申し付けくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
簡潔な表現:ご要望がございましたら、遠慮なくお申し付けください。
敬語の数を増やしても、頼める内容は分かりやすくなりません。範囲を一つ示したほうが、相手への配慮が伝わります。
上司・取引先・お客様への使い分け
お客様には注文や希望を受ける時に使う
接客では、「お申し付けください」が最も自然に使えます。
ただし、「何かございましたら」だけでは、お客様がどこまで頼めるのか分からないことがあります。設備、食事、配送、変更など、対象を添えましょう。
お部屋の温度調整が必要でしたら、フロントまでお申し付けください。
アレルギーのある食材がございましたら、ご予約時にお申し付けください。
対応できる内容と窓口が見えるため、お客様は声をかけやすくなります。
取引先には修正や追加の要望を受ける時に使う
取引先へのメールでは、納品物や打ち合わせ内容に関する希望を受ける場面に合います。
仕様の変更や追加のご要望がございましたら、○月○日までにお申し付けください。
納品方法についてご希望がございましたら、担当の○○までお申し付けください。
期限や連絡先を添えると、単なる定型文ではなく、次の行動につながる一文になります。
反対に、自社の都合で急ぎの返信を求める場面では、「お申し付けください」は合いません。「○月○日までにご返信ください」と、必要な行動を直接伝えます。
上司には追加の仕事を引き受ける場面で使う
上司から追加の依頼を受ける姿勢を示すなら、次の形で使えます。
ほかに準備が必要な資料がございましたら、お申し付けください。
当日の運営について、私に対応できることがございましたら、お申し付けください。
一方、上司の判断を仰ぐなら「ご指示ください」が明確です。
修正の方向性について、ご指示いただけますでしょうか。
伝えてほしい内容が決まっているのに「何かあれば」と広げる必要はありません。
同僚や部下には具体的な言葉が自然
同僚や部下に「お申し付けください」と言うと、相手をお客様のように扱う印象が出やすくなります。
丁寧に伝える必要がある場合も、行動に合わせて言葉を選べます。
変更点があれば、お知らせください。
困っていることがあれば、相談してください。
必要な資料があれば、連絡してください。
敬意を弱めるのではなく、用件を明らかにする言い換えです。
場面別例文|頼める内容まで具体的に伝える
接客・店舗・ホテルで使う例文
接客では、申し付ける対象と窓口を一緒に示すと実用的です。
店側で対応できない内容があるなら、「可能な範囲で承ります」と添えてもよいでしょう。
取引先へのビジネスメールで使う例文
短い一文なら、対象を先に置きます。
掲載内容の修正点や画像の差し替えがございましたら、お申し付けください。
メール全文では、要望を受け付ける期限まで示すと、やり取りが進みやすくなります。
件名:ご提案資料送付の件
株式会社○○
営業部 ○○様いつもお世話になっております。
株式会社△△の□□です。先日の打ち合わせ内容を反映したご提案資料を添付いたします。
ご確認のほど、よろしくお願いいたします。内容の修正点や追加のご要望がございましたら、○月○日までにお申し付けください。
確認のうえ、改めて修正版をお送りいたします。何卒よろしくお願いいたします。
「何かございましたら」ではなく、「内容の修正点や追加のご要望」と示しているため、相手が返信内容を判断しやすいメールです。
資料の確認を依頼する結び方に迷う場合は、「ご確認のほどよろしくお願いいたします」の言い換えも参考になります。
上司への会話・メール・社内チャットで使う例文
改まった支援役として要望を受けるなら、「お申し付けください」が合います。
会議当日に必要な備品がございましたら、私までお申し付けください。
普段の社内チャットでは、次のように具体化すると自然です。
ほかに確認する箇所があれば、お知らせください。
私が対応する作業があれば、ご指示ください。
追加資料が必要でしたら、今日中に用意します。
最後の例は、対応できる時間まで伝えています。丁寧な定型句より、上司が仕事を頼みやすい一文です。
クレームや不具合の対応で使う例文
不具合への対応では、「何なりと」と広く受けるより、選べる手続を示します。
交換または返金をご希望の場合は、注文番号をご用意のうえ、担当窓口までお申し付けください。
訪問修理をご希望の場合は、ご都合のよい日時を担当者にお申し付けください。
重大な不具合に対して「お気軽にお申し付けください」と書くと、事態を軽く扱っているように見える場合があります。まず謝罪と対応内容を示し、その後に希望の伝え方を案内しましょう。

「何なりと」「遠慮なく」「お気軽に」「くださいませ」の違い
似た表現でも、相手に与える印象は同じではありません。
| 表現 | ニュアンス | 適する場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 何なりとお申し付けください | 幅広く要望を受ける | 接客、担当者としての支援 | 対応できないことまで含めやすい |
| 遠慮なくお申し付けください | ためらわず伝えてほしい | 取引先、改まった接客 | 頼める対象を添えると明確 |
| お気軽にお申し付けください | 声をかける負担を下げる | 店舗、相談窓口 | 深刻な謝罪やクレーム対応には軽い |
| お申し付けくださいませ | 柔らかく接客的 | ホテル、店舗、式場 | 上司や一般的な社内メールでは過剰になりやすい |
「何なりと」は幅広い要望を受ける意思を示す
「何なりと」は、どのようなことでも、という強い受け入れ姿勢を表します。
ご滞在中にお困りのことがございましたら、何なりとお申し付けください。
手厚い印象になる反面、対応範囲が限られるサービスには向きません。「設備に関するご要望がございましたら」のように対象を絞るほうが誤解を防げます。
「遠慮なく」は相手のためらいを取り除く
相手が修正や追加を頼みにくいと考えられる場面では、「遠慮なく」が役立ちます。
表現やデザインの修正点がございましたら、遠慮なくお申し付けください。
取引先にも使いやすく、親しみより配慮を強く示す表現です。
「お気軽に」は相談しやすさを伝える
「お気軽に」は、問い合わせや声かけの心理的な負担を下げます。
商品選びでお困りの際は、お気軽にスタッフへお申し付けください。
初回相談や店舗案内には合います。しかし、苦情や損害が発生した場面では軽く響くため、「担当窓口までご連絡ください」などに替えます。
「お申し付けくださいませ」は接客向けの響きが強い
「くださいませ」は「ください」を柔らかくした丁寧な言い方です。文法上の問題はありません。
ホテルや百貨店など、改まった接客では自然に聞こえます。上司への日常的なメールで使うと、丁寧さより接客らしさが目立つことがあります。
「お申し付けください」の言い換えと避けたい使い方
相手にしてほしい行動別の言い換え早見表
「お申し付けください」が合うか迷ったら、相手から何を受け取りたいのかを言葉にします。
| 伝えてほしい内容 | 適した表現 | 使用例 |
|---|---|---|
| 注文・仕事の依頼 | ご用命ください | 制作のご依頼は弊社までご用命ください |
| 希望・変更 | ご要望をお知らせください | 変更のご要望があればお知らせください |
| 進め方・判断 | ご指示ください | 修正の方向性をご指示ください |
| 情報・予定 | お知らせください | ご都合のよい日時をお知らせください |
| 連絡 | ご連絡ください | 到着されましたらご連絡ください |
| 質問 | お問い合わせください | ご不明な点は窓口へお問い合わせください |
| 相談 | ご相談ください | 日程が合わない場合はご相談ください |
| 対面での呼びかけ | お声がけください | お帰りの際は係員にお声がけください |
| 意見・感想 | お聞かせください | 使用後のご感想をお聞かせください |
「ご用命ください」は、商品やサービスの注文、仕事の依頼に適した表現です。単なる質問や日程の連絡には向きません。
自分の行為に「お申し付けします」を使わない
「お申し付けください」は相手の行為を立てる表現です。その形を、自分の行為には使いません。
不自然:担当者に私からお申し付けします。
自然:担当者に私から伝えます。
自然:担当者へ対応を依頼します。
「私から担当者に申し付けます」という形は文法上あり得ますが、担当者へ命じる強い響きがあります。単に伝達や依頼をする場面なら、「伝えます」「依頼します」のほうが内容に合います。
対応できないのに「何なりと」と書かない
「何なりとお申し付けください」と書いた直後に、「それは対応できません」と断れば、丁寧な言葉との落差が生まれます。
対応できる範囲を最初から示しましょう。
曖昧:ご要望は何なりとお申し付けください。
明確:納品形式と送付方法のご要望は、担当者までお申し付けください。
範囲を狭めることは、不親切ではありません。相手が依頼できる内容を正確に伝える案内です。
質問・連絡・指示をすべて同じ言葉で済ませない
結びの一文を毎回「何かございましたら、お申し付けください」にすると、メールの目的がぼやけます。
質問を受けたいなら「ご不明な点はお問い合わせください」、修正点を知りたいなら「修正点をお知らせください」と書けます。
連絡を求める表現を相手や場面に合わせて選びたい場合は、「ご連絡ください」の丁寧な言い換えも確認してみてください。
読み手が返すべき内容を一つに絞ると、返信も早くなります。

「お申し付けください」に関するよくある質問
「お申し付けくださいませ」は目上にも使えますか?
使えます。
「くださいませ」は柔らかく丁寧な表現なので、お客様や取引先に使っても失礼ではありません。ただし、接客の響きが強いため、上司には「お申し付けください」か、用件に合う「ご指示ください」「お知らせください」が自然です。
「お申し付けいただければ幸いです」は正しいですか?
正しい表現です。
「お申し付けください」よりも依頼の調子が弱く、任意の希望を募る場面に使えます。ただし、要望を受け付ける案内としては回りくどくなる場合があります。
ご希望がございましたら、お申し付けいただければ幸いです。
必要でしたら、お申し付けください。
二つ目のほうが短く、何をすればよいかもすぐに伝わります。
「お申し付けください」と「お申し出ください」の違いは何ですか?
「お申し付けください」は、依頼、注文、要望などをこちらへ伝えてもらう表現です。
「お申し出ください」は、条件に当てはまる人や希望する人に、自分から名乗り出てもらう時に使います。
備品の追加が必要な方は、係員にお申し付けください。
食物アレルギーをお持ちの方は、受付時にお申し出ください。
頼みたい内容を伝えるなら「申し付ける」、事情や意思を自ら申告するなら「申し出る」と考えると区別しやすいでしょう。
「下さい」と「ください」はどちらが正しいですか?
ビジネス文書では、「お申し付けください」と平仮名で書くのが一般的です。
「ください」は「お申し付け」の後に続き、相手へ行為を求める補助的な働きをしています。
文化庁の「公用文作成の考え方」でも、補助動詞は平仮名で書く考え方が示されています。
出典:文化庁
品物を求める「資料を下さい」のような場合は、動詞として漢字で書けます。
「お申し付けください」と言われた時は何と返しますか?
今すぐ要望がなければ、感謝を伝えるだけで問題ありません。
ありがとうございます。必要な際はご相談いたします。
ご配慮いただき、ありがとうございます。
依頼したいことがある場合は、「それでは、一点お願いしてもよろしいでしょうか」と続けてから内容を伝えます。
反対に、依頼や注文を受けた時の返答は、「承りました」と「承知しました」の違いで場面別に確認できます。
まとめ|目上かどうかより、何を伝えてほしいかで選ぶ
迷った時に確認する三つのポイント
「お申し付けください」は、お客様や取引先、上司など目上の人にも使える敬語です。
ただし、使えることと、その場に自然になじむことは同じではありません。
- お客様・取引先から注文や要望を受ける場面には適している
- 上司にも使えるが、日常的な社内会話では硬く響くことがある
- 指示、連絡、質問など内容が決まっているなら、具体的な言葉へ替える
冒頭で迷っていた取引先へのメールなら、次の一文で問題ありません。
資料の修正点や追加のご要望がございましたら、お申し付けください。
「何かございましたら」と広げず、頼める内容を示しています。相手は、何を返せばよいのかすぐに判断できます。
敬語として正しいかを確かめた後に、もう一度だけ、相手が頼める内容まで見直す。その一手間で、丁寧なだけの一文が、実際に使いやすい案内へ変わります。
ことのは先生よりひとこと

「お申し付けください」は、目上の人にも使える正しい敬語です。
相手が何を頼めるのかまで添えると、丁寧さが具体的な配慮に変わります。
迷った時は、指示・連絡・質問など、受け取りたい内容を確かめてみましょう。




