きつく聞こえない注意の仕方 相手のやる気を下げない伝え方と言葉選び

きつく聞こえない注意の仕方 相手のやる気を下げない伝え方と言葉選び 言い方・伝え方

きつく聞こえない注意の仕方 相手のやる気を下げない伝え方と言葉選び

仕事で注意を伝えたい場面は避けられないのに、きつく聞こえないか不安になることがあると思います。
部下や後輩にミスを指摘したい。
同僚に直してほしい点がある。
それでも、相手のやる気や関係性は守りたい。

本記事では、感情論ではなく「言葉の選び方」と「伝え方の順番」に焦点を当てて整理していきます。
怒らずに伝える方法というより、相手が受け取りやすい形に整えるイメージです。

この記事で分かること

  • 注意がきつく聞こえてしまう原因と言葉・タイミングのよくあるパターン
  • 相手ではなく行動に焦点を当てて伝える基本スタンスと考え方
  • 前提と目的から伝える、行動レベルまで具体化するなど三つのコツ
  • 場面別に使える、きつくならない注意フレーズの具体例
  • 注意の前後で確認したいチェックポイントと、関係を保つためのひと言

明日すぐに会話で試せるレベルまで落とし込みます。
まずは「なぜきつく聞こえてしまうのか」から、一緒に整理していきましょう。


注意がきつく聞こえてしまう原因を整理する

自分では落ち着いて話したつもりなのに、相手からきつく感じましたと言われて驚くことがあります。
多くの場合、そこで使った言葉そのものだけが原因ではありません。

言葉の内容。
声のトーン。
話すスピード。
表情や姿勢。
さらに、上下関係やそのときの状況。

こうした要素が重なった結果として、相手の中での印象が決まっていきます。
指摘の内容は正しくても、伝わり方しだいで「注意」ではなく「叱責」に変わってしまうこともあるでしょう。

例えば、事実だけを短く並べると、効率的な話し方に見える一方で、説明不足になりやすいです。
本人は合理的に話しているつもりでも、相手は理由が分からず、防御的な気持ちになってしまうことがあります。

また、注意をする側が緊張していると、声が低くなったり、早口になったりしやすいです。
それだけで、相手には思った以上に圧が強く伝わる場合もあるでしょう。

さらに、タイミングや場所も大きな要素です。
忙しさのピーク時に、周囲に人がいる場所で短く注意だけを伝える。
この組み合わせは、内容に問題がなくても「きつかった」と感じられやすい場面といえます。

まずは、きつさの正体は言葉だけではなく、複数の要素の掛け合わせで生まれているという前提を押さえておくことが大切だと思います。
そのうえで、よくあるパターンを少し細かく見ていきます。


きついと言われやすい人の共通パターン

きついと言われやすい人には、いくつか共通する傾向があります。
性格が厳しいから、というよりも、話し方のクセがそう見せている場合が多いでしょう。

一つ目は、事実だけを端的に伝えようとするあまり、説明が少なすぎるパターンです。

たとえば
「この資料、ここが違います。」
「締め切り、守れていません。」

事実だけを見ると間違ってはいません。
ただ、なぜ問題なのか、どの程度の影響があるのか、次にどうしてほしいのかが言葉にされていないため、相手には否定だけが強く残りやすいです。

二つ目は、声や話し方のトーンです。
早口で、一気にまくしたてるように話してしまう。
声が低めで抑揚が少なく、語尾が強く落ちる。
これらが重なると、内容が穏やかでも、相手は緊張しやすくなります。

三つ目は、本人の自覚と相手の受け取り方のギャップです。
注意する側は、仕事だから当然のことを伝えているだけ、と思っているかもしれません。
一方で、注意される側は、評価されている立場にいることが多く、もともと少し身構えているでしょう。

その状態で、短く、低いトーンで、説明少なめの指摘が続くと、きつい人だと認識されやすくなります。
自分では普通のつもりでも、背景にある上下関係や評価という要素が、相手の緊張を高めていると考えた方が現実的だと思います。

自分の話し方を責める必要はありませんが、

  • 説明の量
  • 声のトーンやスピード
  • 相手が置かれている立場

この三つを意識して振り返るだけでも、印象は徐々に変わっていくでしょう。


言葉選びとタイミングが生むズレ

同じ内容でも、言葉の選び方とタイミングによって、受け取られ方は大きく変わります。

例えば、ミスが起きたときに

「なんでこうなったの。」

とだけ聞くと、相手は責められている感覚を持ちやすいです。
一方で

「今回の流れを一度一緒に振り返らせてください。」

と切り出してから確認に入ると、同じ事実確認でも印象がかなり変わるでしょう。

タイミングも重要です。
相手が明らかに忙しそうなとき、別の対応で手一杯のときに、廊下で立ち止まらせて

「さっきの対応、良くなかったです。」

とだけ伝える。
内容が正しくても、本人にとっては「今それを言われても」という気持ちになりやすいです。

また、皆がいる前での指摘も負担が大きくなりやすい場面です。
会議中に名指しでミスを指摘する。
チャットの全体チャンネルで、一人のミスを取り上げる。
伝えたいことは同じでも、場所を変えるだけで、きつさの印象は大きく下がるはずです。

言葉選びとタイミングは、注意の内容と同じくらい重要な要素だと考えた方が良いでしょう。
次のパートでは、この前提を踏まえたうえで、どのようなスタンスで注意に向き合うとよいかを整理していきます。


きつく聞こえない注意の基本スタンス

言い回しのテクニックより先に、まずは「どんな気持ちで注意するか」が土台になります。
ここがぶれていると、どれだけ言葉を工夫しても、とげが残りやすいでしょう。

大事なのは、人ではなく「行動」と「事実」に目を向けることです。
相手の性格や能力を評価する言い方になるほど、受け取る側は身構えます。
一方で、具体的な行動や結果にしぼって伝えると、相手も「何を変えれば良いか」を考えやすくなります。

もう一つの前提が「相手の成長を願うスタンス」です。
その場のイライラをぶつけるためではなく、今後同じことが起きないように共有したい。
この意識を自分の中で言葉にしておくと、自然とトーンや表情も変わってくるはずです。

そして、注意は一度きりで終わらないことが多いです。
今回のミスだけでなく、この先も一緒に仕事をしていくための話だと捉えるかどうか。
この視点があると、「責める」「裁く」ではなく「一緒に直していく」方向に意識が向きやすくなるでしょう。

次に、スタンスを具体的な行動に落とし込むための二つのポイントを見ていきます。


相手ではなく行動に焦点を当てる

注意がきつく響く大きな理由の一つが「人そのもの」を評価する言い方です。

例えば、次のような表現です。

  • あなたはいつも遅い
  • 本当に段取りが悪い
  • もっとしっかりしてほしい

これらは、どれも相手の性格や能力にラベルを貼る言い方になっています。
言われた側は、どこをどう変えれば良いのかが分かりにくく、ただ否定された感覚だけが残りやすいでしょう。

一方で、行動と事実に焦点を当てると、同じ指摘でも印象が変わります。

例を挙げます。

  • 今日の提出が予定より30分遅れたので、次回は開始時刻の1時間前には目処を立てたいです。
  • 今回のメールでは、宛先の一部が抜けていました。今後は送信前に宛先だけ一度確認してもらえますか。

どちらも、
・いつの話か
・何がどう問題だったのか
・次にどうするか
が文の中に含まれています。

相手の価値を否定するのではなく、行動の「どの部分」を変えてほしいのかを伝える。
この切り替えを意識するだけでも、きつさはかなりやわらぐはずです。


注意の前に自分の感情を確認する

注意を伝えるとき、こちら側のコンディションも印象に大きく影響します。
焦っているとき。
いら立ちが残っているとき。
時間に追われているとき。

そういった場面では、いつもより声が大きくなったり、早口になったりしやすいでしょう。
本人は普通のつもりでも、相手には強い口調として届きやすくなります。

そこで有効なのが、「注意の前に自分の感情を一度確認する」ことです。

例えば、次のような小さな工夫があります。

  • すぐに言わず、数分だけ間をおいてから話す
  • 立ったままではなく、席に座ってから落ち着いて話す
  • 皆の前ではなく、短時間でも個別に声をかける

一呼吸おく。
場所を変える。
姿勢を変える。

それだけでも、声のトーンや表情は少し落ち着きます。
その状態であれば、同じ内容でも伝わり方はかなり違ってくるはずです。

自分の感情を抑え込む必要はありません。
ただ、「今の自分はどんな状態か」を一瞬だけ振り返る。
そのうえで伝え方を選ぶ意識が、きつく聞こえない注意の土台になると思います。


コツ1 前提と目的から先に共有してから注意する

注意の言葉がきつく響くかどうかは、最初の一言で大きく変わります。
いきなりミスの指摘や不足の話から入ると、相手は身構えやすくなります。
内容が正しくても、防衛反応が先に立つと、肝心なポイントが届きにくくなるでしょう。

そこで意識したいのが「前提」と「目的」を最初に共有してから注意に入る順番です。

この仕事を今後も任せていきたい。
一緒に進めたい。
お客さまへの影響を小さくしたい。

こうした目的を先に一言で伝えておくと、相手は「自分を否定されている」のではなく「仕事を良くするための話だ」と受け取りやすくなります。

また、前提が共有されることで、注意の位置づけもはっきりします。
今回だけの不満なのか、今後に向けた話なのか。
個人への不満なのか、やり方を一緒に見直したいのか。

同じ指摘でも、前提と目的があるかどうかで、印象は大きく変わるはずです。
ここでは、前提と目的を一言で添えるときの考え方を整理していきます。


なぜ今その話をするのかを一言添える

注意の前に「なぜ今、この話をするのか」を一言で伝えておくと、相手の構え方がやわらぎます。

例えば、いきなり

「今日のメール対応、少し問題がありました。」

と切り出すより、最初に

「今後もお客さま対応を安心して任せていきたいので、一点だけ共有させてください。」

と前置きを入れる。
そのうえで具体的な指摘に入る方が、相手は話を「自分への期待」として受け取りやすくなります。

ほかにも、次のような前置きが考えられます。

「来月から担当範囲が広がるので、その前に一度お伝えしておきたいことがあります。」
「今後同じ案件をお願いしていきたいので、今回の振り返りを少しだけさせてください。」

どれも、

  • 今回だけの不満ではないこと
  • 今後も任せていきたい前提があること

を先に示しています。

目的が見えると、人は防衛的になりにくくなります。
相手も「責められている」のではなく「期待されている」と感じやすくなるでしょう。

注意の内容を考える前に、
この話は何のためか。
相手にどうなってほしいのか。
自分の中で言葉にしてから、一文目を選ぶ習慣を持てると効果が出やすいです。


相手の立場を踏まえた一言を足す

前提と目的に加えて、相手の状況への理解を示す一言を足すと、印象はさらに変わります。

例えば

「今回は急な依頼だったことは理解していますが、一点だけ確認させてください。」

このように、相手が置かれていた条件を先に認める。
そのうえで、具体的な改善点に触れると、相手は「事情を分かったうえで話してくれている」と感じやすくなります。

ほかの例です。

「お忙しい時期だとは承知していますが、スケジュールの共有方法を少し見直したいと思っています。」
「初めての担当で大変だったと思います。その前提で、次回に向けて一つだけ提案させてください。」

ここで大事なのは、免罪符にすることではありません。
大変さや難しさを一度受け止めたうえで、それでも一緒に改善したいという姿勢を示すことです。

前提と目的。
相手の立場への理解。

この二つがセットになると、同じ注意でも受け取り方が大きく変わります。
次のパートでは、この前提を踏まえて「行動が変わるレベルまで具体的に伝えるコツ」を整理していきます。


コツ2 行動が変わるレベルまで具体的に伝える

注意の言葉がきつく聞こえるかどうかは、内容だけでなく「どこまで具体的に伝えているか」にも左右されます。
ふわっとした表現や、感情だけを伝える注意だと、相手は何を変えればよいのか分かりにくいでしょう。
結果として、反省よりもモヤモヤだけが残りやすくなります。

大事なのは、次に相手にしてほしい行動まで含めて伝えることです。
さっきのやり方はよくなかった、という評価で終わらせない。
この場面では、こういう手順で進めてほしい、と行動レベルまで落とし込むイメージです。

そのための目安が
誰が
いつまでに
何を
どこまで、どう変えるのか
という四つのポイントです。

すべてを毎回盛り込む必要はありません。
ただ、少なくとも「誰が」「何をするのか」が伝わるように言い切るだけでも、相手の受け取り方は変わっていくはずです。

ここからは、具体的な言い方の工夫を見ていきます。


誰がいつまでに何をどう変えるのかを明確にする

抽象的な注意は、相手の行動を変えにくいです。
さっきのやり方はよくなかった、もう少し気を付けてほしい、という言い方は、その典型でしょう。

一方で、次に取ってほしい行動を短い指示として言い切ると、相手は具体的なイメージを持ちやすくなります。

例をいくつか挙げます。

さっきのやり方はよくなかった
という言い方を、次のように変えるイメージです。

「次回からは、作業手順を事前に一度共有してから進めてもらえると助かります。」

もう少し早く動いてほしい
という注意なら、

「来週からは、締め切りの二日前までに一度途中経過を共有してもらえますか。」

このように、
誰が(あなたが)
いつまでに(いつ、どのタイミングで)
何を(どの作業を、どのレベルまで)

という要素を含めて言い切ると、次の一歩がはっきりします。

注意の場面では、過去の行動への評価だけで終わらせず、次にどう動いてほしいかまでセットで伝える。
この意識があると、同じ内容でもきつさより「具体的な指示」として受け取ってもらいやすくなるでしょう。


曖昧な注意を具体文に変えるビフォーアフター

感情が先に立つと、つい曖昧な言い方になりがちです。
ちゃんと確認して。
もう少し丁寧に対応して。

これらは、言われた側からすると、何をどう変えればよいのか判断が難しい表現です。
ここでは、よくある一言を、行動につながる文章に書き換える例をいくつか挙げます。

ちゃんと確認して
という注意を具体化するなら、

「送信前に、宛先と添付ファイルだけは必ず二度確認してもらえると助かります。」

もう少し丁寧に対応して
という言い方なら、

「お客さまへの返信では、最初の一文に先ほどはお問い合わせありがとうございますの一言を入れてもらえますか。」

気を付けて
という表現も、

次のように変えられます。

「今後は、作業を始める前に、手順書の最新ページを一度だけ確認してから進めてもらえると安心です。」

どの例も、感情的な評価ではなく、具体的な行動の変更を伝えています。
この書き換えを意識するだけで、注意の言葉はぐっと実務的になりますし、余計なとげも減っていくでしょう。

次のコツでは、こうして伝えた内容が実際に伝わっているかを、一緒に確認する習慣づくりについて整理していきます。


コツ3 伝わったかを一緒に確認する習慣をつくる

注意を伝えたあと、そのまま会話を切り上げてしまうと「言った側だけが満足している状態」になりやすいです。
相手の表情を見て、うなずいているから大丈夫だろう。
はい、と返事をしているから分かってくれたはず。
こうした判断は、現場ではよくありますが、誤解の温床にもなりやすいでしょう。

きつく聞こえない注意にしたいなら、「伝える」で終わらせず「伝わったかを一緒に確認する」ステップまでをセットにしておくことが大切です。
確認は相手を疑う行為ではなく、お互いに認識をそろえるための作業と考えた方が現実的だと思います。

具体的には、相手の口から要点を言ってもらうこと。
疑問や不安があれば、その場で出してもらうこと。
メールやチャットであれば、認識に相違がないかを軽く問い直す一文を添えることです。

この一手間があるだけで、同じミスの繰り返しは確実に減っていきます。
同時に、注意された側も「一緒に確認してくれた」という感覚を持ちやすくなり、関係性も保たれやすいでしょう。


要点を相手の口から言ってもらう

口頭で注意を伝えたあとにおすすめなのが、次の行動を相手の言葉で確認してもらうやり方です。

例えば、注意の内容を伝えたあとに、

「では、次回からどうしていきましょうか。」
「ここまでの話を簡単に整理すると、どうなりそうですか。」

といった一言を添えます。
相手が自分の言葉で要点をまとめると、理解している部分と、まだあいまいな部分が浮かび上がりやすくなるでしょう。

このとき、上司側がすぐに答えを補わないこともポイントです。
相手の言葉を最後まで聞き、ずれているところだけを修正したり、少し足りない部分を補ったりするイメージで関わると、押しつけ感が減ります。

また、部下や後輩にとっても、自分で言語化することで「やらされている注意」から「自分で選んだ改善」に変わりやすくなります。
納得感や記憶への残り方も変わっていくはずです。

注意の締めくくりに、ほんの一、二問の確認を加えてみる。
それだけでも、きつさより「一緒に振り返ってくれた」という印象を持ってもらいやすくなるでしょう。


メールやチャットでの確認フレーズ

メールやチャットで注意や改善点を共有した場合は、顔が見えない分だけ誤解が生まれやすくなります。
そこで、最後に軽い確認フレーズを添えておくと、認識合わせがしやすくなります。

例えば、次のような一文です。

「先ほどの内容について、認識に相違がないかご確認いただけますと幸いです。」
「上記の進め方で問題なければ、その旨ご返信いただけますと助かります。」

どちらも、強く責めるトーンではなく、「一緒に確認したい」という姿勢を示しています。
読み手にとっても、疑問点があれば返信しよう、というきっかけになりやすいでしょう。

チャットの場合は、もう少し簡略化しても十分です。

「この方針で進めようと思いますが、気になる点があれば教えてください。」
「認識がずれていそうなところがあれば、遠慮なく指摘してもらえると助かります。」

このような一言があるだけで、「一方的に注意された」という印象はかなり薄れます。
言いっぱなしではなく、相手からのリアクションを歓迎する姿勢を見せること。
それが、きつく聞こえない注意を支える大事な習慣になるはずです。


場面別 伝わっていないを減らす会話例

考え方だけ分かっても、実際の会話でどう言い換えればよいか迷うことがあると思います。
ここでは、日常でよくある三つの場面を取り上げて、伝わっていないを減らす会話のイメージを具体的にしていきます。

  • 上司と部下の指示・報連相
  • 同僚同士の依頼・情報共有
  • オンライン会議やチャットでのやり取り

それぞれの場面で、少し言い方を変えるだけで、誤解やモヤモヤが減りやすくなります。


上司と部下の指示・報連相の場面

上司から部下への指示は、伝えたつもりになりやすい場面です。
一方で、部下から上司への報告も、何をどこまで話せばよいか迷いやすいでしょう。

まず、上司側の具体的な指示の例です。

上司
「来週のA社打ち合わせの資料について、一度流れを整理してほしいです。
木曜の午前中までに、たたき台のスライドを5枚ほど作ってもらえますか。」

ここでは、
・何の資料か
・いつまでに
・どの程度の完成度か
までを一度に伝えています。

このあと、部下側が受け取り方を一言で返すと、ズレがさらに減ります。

部下
「承知しました。
来週のA社向けの打ち合わせ資料について、木曜の午前までに、流れを整理したたたき台を5枚作る、という認識で大丈夫でしょうか。」

上司
「はい、そのイメージです。」

上司の指示を、そのまま言い換えて確認する形です。
大げさに感じるかもしれませんが、担当範囲や納期の誤解を減らすには有効な方法だと思います。

報告側も、上司が「今いちばん知りたいこと」から話し始めると、伝わりやすくなります。

部下
「A社の件ですが、結論としては予定どおり納品できる見込みです。
現状はテスト中で、明日中に最終確認を完了させる予定です。」

このように、結論→現状→今後の順番を意識すると、上司側も状況をつかみやすくなるでしょう。


同僚同士の依頼・情報共有の場面

同僚間のやり取りでは、関係性が近い分だけ、あいまいな表現が増えやすいです。
その結果として「聞いたつもり」「頼んだつもり」のズレが起きがちです。

よくある言い方が、次のような一言です。

「時間あるときに、あの件お願い。」

言われた側は、
いつまでに
どの程度の優先度で
どこまでやればよいか
が分かりにくい状態でしょう。

これを少し具体化すると、印象が変わります。

依頼する側
「今週の金曜の午前中までに、B社リストの最新分だけ更新をお願いしたいです。
優先度は高めで考えています。」

依頼を受ける側が、さらに確認を足すと、なお安心です。

依頼を受ける側
「金曜の午前までに、B社リストの最新分の更新ですね。
先にC社案件を終えてから着手する形で問題ないでしょうか。」

このように、
・期限
・範囲
・優先度
のどれか一つでも具体的にすると、同僚間の誤解はかなり減っていきます。

チームチャットなどでの依頼文も、少し手を入れるだけで変えられます。

NG寄り
「だれかB社リスト更新できる人いますか。」

書き換え例
「B社リストの最新分の更新を、金曜午前までにお願いしたいです。
対応可能な方はリアクションをもらえると助かります。」

短い一文でも、何を・いつまでに・誰に向けて書いているかが見えるように意識すると、伝わっていないを減らしやすくなるでしょう。


オンライン会議・チャットでの注意点

オンラインでのやり取りは、表情や雰囲気が伝わりにくく、前提がそろっていないまま話が進みやすい場面です。
カメラオフ、音声のみ、チャットのみの場合は、とくに誤解が増えやすいでしょう。

オンライン会議では、最後の一言で決定事項をきちんと言い切ることが大切です。

締めの例
「では、決定事項を整理します。
A社提案のたたき台は田中さん、期限は来週火曜の午前中まで。
B案の比較資料は佐藤さんが金曜までに作成。
この内容で進めていきましょう。」

この一言があるだけで、会議後の認識のズレは大きく減ります。

チャットでタスクを依頼するときも、要点を短くまとめてから送ると伝わりやすいです。


「オンライン会議の議事録ですが、
・担当:山田さん
・期限:本日18時まで
・形式:これまでと同じフォーマット
でお願いできますか。」

カメラオフや音声のみの場面では、相手の反応が見えません。
決定事項、担当者、期限の三つだけでも、最後に言い切る習慣を持つと、伝わっていないをかなり減らせるはずです。


避けたい言い方と誤解を招くパターン

伝えたはずという感覚が強いのに、相手には届いていない。
その背景には、内容よりも「前提の置き方」や「一言のトーン」が影響していることがよくあります。

とくに気を付けたいのが、相手は分かっているはずだという前提で話してしまう言い方と、結果的に相手を責めるように聞こえる表現です。
どちらも、話し手に悪気はなくても、防衛的な反応を引き出しやすいでしょう。

分かっていますよね、というニュアンスが強い言葉は、相手の理解度や状況を確認する前提を飛ばしています。
その状態で注意や指示を重ねるほど、相手の中では「説明してくれないのに責められている」という印象が残りやすくなります。

また、前にも言いましたが、何度も同じことを言っていますが、といった枕ことばは、状況共有として必要な場面もあります。
一方で、言い方を少し変えないと、相手の自尊心を強く刺激し、今後の関係に響く可能性もあるでしょう。

このパートでは、代表的なフレーズと、その危うさを整理しつつ、角を立てにくくする方向性に触れていきます。


分かっている前提で話してしまう一言

分かっているはずだという前提で語ると、相手の頭の中にある情報との差が見えにくくなります。
典型的なのが、次のような一言です。

「さっき言った通りでお願いします。」
「この前と同じ感じでやっておいてください。」

これらは、一見すると効率的な言い方に見えます。
ただし、聞き手側の状況を考えると、次のようなリスクがあるでしょう。

  • さっきの説明のどの部分を指しているのかがあいまい
  • この前と同じが、どの案件やどの手順を指すのかが不明確
  • 聞き逃しや理解不足を確認しにくい空気になる

結果として、相手は推測で動くことになり、再度の修正や手戻りが増えやすくなります。

避けたいのは、「分かっていますよね」という圧を含んだ言い方です。
代わりに、要点だけをもう一度短く言い切る方が、むしろ全体としての効率は上がることが多いと感じます。

例えば、こうした言い換えが考えられます。

「先ほどお伝えしたA社向けの資料について、今回は商品説明のパートだけを、前回と同じ構成で作成してもらえますか。」

「前回と同じフォーマットで構いませんが、今回分の数値だけ最新のものに差し替えておいてください。」

このように、
何について
どの部分を
どう扱うのか
を少し具体的に言い直すことで、相手任せの前提を減らせます。


相手を責めるように聞こえる言い方

注意や確認のつもりでも、枕ことばしだいで相手を責めるように聞こえることがあります。
代表的なのが、次のような表現です。

「前にもお伝えしましたが。」
「何度も同じことを言っていますが。」

必要な場面もあります。
例えば、手順を変えられない理由を説明するときや、規程上どうしても守ってほしいルールを伝えるときなどです。

ただし、前に言ったはず、何度も言っているはず、というニュアンスが前面に出ると、相手は内容よりも「責められている感覚」に意識が向きやすくなります。
その結果、改善よりも反発や落ち込みの方が強くなってしまうこともあるでしょう。

角を立てにくくする一つの方向性としては、次のような工夫があります。

  • 回数を強調するのではなく、重要度を伝える
  • 自分側の伝え方にも少し責任を置く
  • 今後どうしていきたいかをセットで伝える

例えば、次のような言い換えが可能です。

前にもお伝えしましたが、よりも

「このルールはお客さまへの影響が大きいため、改めて共有させてください。」

何度も同じことを言っていますが、よりも

「こちらの伝え方も含めて振り返りたいのですが、この手順だけは毎回守る形にしたいと考えています。」

このように、相手だけに原因があるというトーンを少し弱めつつ、それでも守ってほしい点は明確に伝える。
そのバランスを意識することで、必要な注意は残しつつ、関係へのダメージを抑えることができるはずです。

次のパートでは、記事全体をまとめながら、日常で使えるチェックリストの形に整理していきます。


まとめとチェックリスト

注意の仕方は、言葉だけの問題ではありません。
前提の共有、具体性、確認という三つのステップをそろえることで、きつさを抑えつつ、やる気が残る伝え方に近づいていきます。

感情を押し殺す必要はありません。
ただ、ぶつける前に一度整える。
そのうえで、相手と一緒に改善していくイメージを持てると、注意の場面そのものが少し楽になるはずです。

ここまでの内容を、最後にコンパクトに振り返ります。


三つのコツのおさらい

まず一つ目は、前提と目的から伝えることです。
なぜ今この話をしているのか。
何のための指摘なのか。
最初の一文で共有すると、防衛的な反応が起きにくくなります。

二つ目は、行動レベルまで具体化することです。
さっきのやり方は良くなかった、でもう終わらせず、誰がいつまでに何をどう変えるのかまで言葉にします。
次に取ってほしい一歩を具体的に示すと、相手は動きやすくなるでしょう。

三つ目は、伝わったかを確認することです。
一方通行で終わらせず、次回どうするかを相手の口から言ってもらう。
メールやチャットでは、認識に相違がないかを確かめる一文を添える。
この習慣が、同じ注意を何度も繰り返す負担も減らしていきます。

日常の会話やメールでも、この三つのコツを意識するだけで、伝わり具合は少しずつ変わっていくはずです。


今日から使える伝え方チェックリスト

注意やお願いを「送る前・話す前」に、次のポイントをざっと見直してみてください。
全部そろっていなくても構いません。
二つでも意識できれば、伝わり方はかなり変わります。

  • この話をする目的を、一文で言えているか
  • 背景や状況を、相手が分かる範囲で書いているか
  • 誰が、いつまでに、何をするかが文の中に含まれているか
  • 感情の評価ではなく、具体的な行動や事実に触れているか
  • 相手の立場や状況への理解を示す一言を添えているか
  • 誤解がないかを確認する一文(たとえば認識に相違がないか、など)を入れているか
  • きつく聞こえそうな言い回し(前にも言いましたが など)を、言い換えられないかチェックしたか

短いメモでも構いません。
自分なりのチェック項目を二、三個だけ手元に置いておくと、注意の場面でも落ち着いて言葉を選びやすくなると思います。


ことのは先生よりひとこと

ことのは先生
ことのは先生

一度で完璧に伝えようとすると、言葉が強くなりがちです。
少しずつ確認し合える関係をつくる方が、長い目で見ると仕事も進みやすくなります。
今日から一つだけでも、伝え方の工夫を試してみてください。

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