会議で発言を促す言い方と回し方|沈黙を崩すファシリテーション質問・フレーズ集
会議で沈黙が続くと、司会としては焦りますよね。
「誰に振ればいいのか」「指名すると圧にならないか」「意見が偏ってしまう」など、発言を促す場面には地味に難しい判断が詰まっています。
でも実は、沈黙は“人の問題”というより「場の設計」と「質問の出し方」でかなり改善できます。
言い回しを増やす前に、目的・観点・順番を少し整えるだけで、発言は驚くほど出やすくなります。
会議が沈黙する理由は「人」より「場の設計」で決まる
沈黙の主因:心理的安全性が低いと発言コストが跳ね上がる
会議の沈黙は、参加者の性格や能力よりも、その場で発言するリスクが高く見える状態で起きやすくなります。
否定される、評価が下がる、的外れだと思われる、責任を背負わされる。こうした不安があると、発言しないほうが合理的になります。
GoogleのProject Aristotleでも、効果的なチームに共通する要素は「誰がいるか」より「どう働くか」に寄っていて、最上位に心理的安全性が挙げられています。
心理的安全性が高いチームでは、間違いを認める・質問する・新しい案を出すといった対人リスクを取りやすい、と整理されています。
出典:Rework
つまり沈黙を崩したいなら、まずは「発言しても損をしない」と感じられる設計に戻すのが最短です。個人の勇気に頼るほど、沈黙は固定化します。
問いが広すぎると沈黙する(質問の粒度が原因)
「どう思う?」「何かある?」のような問いは一見オープンですが、実務では負担が大きく沈黙を呼びがちです。
理由は単純で、答えるために必要な前提が多すぎるからです。
広すぎる問いが沈黙を生む典型パターンは次の3つです。
対策は、質問を「答えの型が見える形」に落とすことです。
例えば同じ内容でも、こう変えるだけで発言が出やすくなります。
「発言のハードルを下げる」のは、優しい言葉より先に、答えやすい粒度にすることです。
結論:沈黙対策は「質問設計+順番+ルール」で8割決まる
沈黙を崩すコツは、フレーズ集ではなく運用設計です。
ここで一度、対策を3点に固定します。
- 質問設計:答えの型が見える問いにする(選択肢、観点、条件、1つだけOK)
- 順番:発言しやすい人からではなく、発言しやすい形式から入る(例:賛否ではなくリスク列挙、全員一言、チャット併用)
- ルール:否定の仕方・決め方・持ち帰り条件を明文化する(発言のリスクを下げる)
Project Aristotleでも、心理的安全性は「対人リスクを取っても大丈夫」という感覚に関係すると説明されています。
出典:Rework
だからこそ、場のルールと問いの形を整えるほど、自然に声が出る土台ができます。

発言を促す前に整える3点セット(沈黙を作らない土台)
沈黙を崩すフレーズより先に、場の前提を整えるほうが再現性が高いです。
ここでは会議の冒頭1分で入れられる3点セットを、進行担当がそのまま使える形でまとめます。
目的を一言で固定する(何を決める/何を出す)
目的が曖昧だと、参加者は発言の正解が見えません。
結果として「間違えない沈黙」が合理的になります。
目的は一言で、成果物まで言い切るのがコツです(決める/出す/揃える)。
さらに沈黙が出やすい会議ほど、質問も一段小さくします。
目的の固定は、心理的安全性の土台にもなります。
何を求められているかが明確だと、発言コストが下がります。
グランドルールで安心の前提を先に置く
グランドルールは長文にしません。3つだけで十分です。
ポイントは「命令」ではなく「前提共有」にすることです。
心理的安全性が低い場では、発言そのものがリスクに感じられますが、これだけで失敗や評価への不安が下がりやすくなります。
まず書かせる(サイレント)→共有の順にする
いきなり口頭で振ると、同時発話が難しく、早い人だけが話し続ける状況になりやすいです(発言の順番待ち=生産阻害が起きる)。
その結果、静かな人ほど置いていかれます。
そこで、最初に30〜60秒だけ黙って書くを挟みます。これだけで参加率が上がりやすいです。
- 30秒サイレント:各自、付箋やメモに1〜3個書く
- 1分共有:順番に1個ずつ読み上げる(指名ではなく順番)
- まとめ:出たものを分類して次の問いへ
電子的に書き出す方式(チャット欄、共同メモ、フォーム)も、生産阻害を減らす方向で研究が積み上がっています。
出典:ERIC
進行の一言例(短く)
この3点セットが入ると、後の「振り方(誰にどう当てるか)」が効きやすくなります。沈黙が起きても、次の打ち手がすぐ出せます。
沈黙を崩す「振り方」テンプレ(指名しても圧が出ない)
沈黙の場でいきなり指名すると、当てられた側は答えの正解探しに入りやすくなります。
圧を出さずに発言を引き出すコツは、指名前に答えやすいレールを敷いてから当てることです。
型:前提共有→観点提示→1人指名→全体へ拡張
この型は、発言コストを下げつつ会話を広げられる最短ルートです。
ポイントは、指名が突然にならないように前提と観点を先に渡すことです。
テンプレ(そのまま読めます)
沈黙になったときの回収フレーズ(詰まない)
型:選択式で聞く(AかBか、優先はどっちか)
沈黙が長いときは、問いが広すぎる可能性が高いです。
答えやすい問いに変えるだけで、発言が出る確率が上がります。
選択式テンプレ例
さらに出しやすくする一言
型:ラウンドロビンで偏りをなくす(全員に順番)
発言が一部に偏る場では、自由発言より順番に一言のほうが安定します。
目的は盛り上げることではなく、情報を取り切ることです。
- ルール宣言:全員30秒以内で一言ずつお願いします。パスもOKです
- 質問は固定:この案の不安点を1つ、または条件を1つ
- 順番を決める:席順/画面順/名簿順(迷いを消す)
- まとめる:出た論点を3カテゴリに分類して次の問いへ
圧を下げる回し方の例
この3つの振り方を持っておくと、沈黙の場でも進行が崩れません。
次は、さらに場が温まっていないときでも使える具体フレーズ集(立場別・場面別)に落とし込みます。

そのまま使える「発言を促すフレーズ」場面別まとめ
フレーズは「言葉の丁寧さ」より、相手が答えやすい問いになっているかで効きます。
ここでは、短文+使いどころ+注意点で、会議でそのまま使える形にまとめます。
意見を引き出す(穏やかに広げる)
正解を当てさせない。観点を出してもらう。
使える短文フレーズ
沈黙が続くとき(圧を下げて一言を取りに行く)
発言のハードルを下げる。沈黙を「小さく割る」。
使える短文フレーズ
話が長い人がいるとき(角を立てずに他者へ振る)
遮らず、要点を尊重しつつ、発言の分布を戻す。
使える短文フレーズ
次は、これらのフレーズが効くようにするための「回し方」(順番・指名の設計・チャット併用・まとめ方)を、会議の種類別(定例/報告/意思決定)に落とし込みます。
目的別「沈黙を崩す振り方」早見表
結論:丁寧さより「発言しやすい行為設計」で選ぶ
沈黙を崩すコツは、言葉を丁寧にすることではなく、発言の負担を下げる“行為”に変えることです。
早見表
| 目的 | おすすめの振り方 | 使うフレーズ例 | 向く場(対面/オンライン) | 添える一文(安心) | NG例 |
|---|---|---|---|---|---|
| 沈黙を崩したい(最初の一言) | 選択式 → 1人指名 → 全体 | 「A/Bどちら寄りですか?○○さんは?」 | 両方 | 「仮でOKです。方向感だけで」 | 「誰か意見ある?」 |
| 発言を偏らせない | ラウンドロビン(順番に一言) | 「一人30秒で順番に一言お願いします」 | 両方 | 「短くてOK、パスもOKです」 | 「話せる人だけ」 |
| 意見を深めたい(質を上げる) | 観点指定(論点を渡す) | 「リスク/コスト/手戻りの観点でどうですか」 | 両方 | 「思いつく範囲で大丈夫です」 | 「どう思う?」 |
| 反対意見を引き出したい(対立回避) | “懸念”に言い換え+事実主語 | 「反対というより、詰まりそうな点ありますか」 | 両方 | 「出た懸念は“改善材料”として扱います」 | 「反対ある?」 |
| オンラインで発言が止まる | チャット先出し → 拾って指名 | 「まずチャットに1行で。あとで拾います」 | オンライン | 「音声は後でOK、まず文字で」 | 「ミュート外して誰か」 |
| 迷って答えが出ない(思考停止) | サイレント1分 → 共有 | 「1分だけ書き出してから共有しましょう」 | 両方 | 「正解不要。メモのままでOK」 | 「今すぐ答えて」 |
| 結論を早く寄せたい | 前提固定+判断軸提示+指名 | 「目的は○○。判断軸は△△。○○さんどう見ます?」 | 両方 | 「まずは暫定で置きます」 | 「結論だけ言って」 |
| 発言が怖い(否定されそう) | 先にルール宣言+小さく聞く | 「否定なしで。まず一言ベースで」 | 両方 | 「評価ではなく情報収集です」 | 「率直に言って」 |
| 話が長い人がいる(場を戻す) | 要約→承認→他者へ振る | 「要点整理しますね。では別観点で○○さんは?」 | 両方 | 「一言でOKです」 | 「ちょっと長いので」 |
| 決めた後の不安を潰したい | “落とし穴”質問+全体 | 「このまま進める前提で、落とし穴ありますか」 | 両方 | 「今出せる不安は今出しましょう」 | 「異論ないですね?」 |
迷ったときの判断フロー(目的→観点→順番→次アクション)
- 目的を決める:沈黙を割る?偏りをなくす?深める?決める?
- 観点を渡す:リスク/コスト/手戻り/顧客影響/期限 など
- 順番を決める:選択式→指名/順番制/チャット先出し
- 次アクションを置く:「仮でOK」「30秒で」「後で拾う」「期限は○時」
この流れに戻すと、フレーズに悩む時間が一気に減ります。

参加者タイプ別:回し方のコツ(発言しない/強い/上司同席)
発言しない人:事前に“答えやすい問い”を渡す(当てる前に救う)
発言しない人は「意見がない」のではなく、出し方が分からない/失敗したくない/準備時間がないのどれかで止まりがちです。
当てて引き出す前に、答えやすい型を先に渡すと、沈黙の確率が大きく下がります。
- 観点を配る(前日 or 冒頭30秒)
- 例:「今日は リスク と 手戻り だけ見てください」
- 例:「“困る点1つ+良い点1つ” でOKです」
- 書いてから話す(サイレント→共有)
- いきなり口頭は負担が高いので、1分メモを挟む
→オンラインは特に効く(思考のラグを吸収できる)
- いきなり口頭は負担が高いので、1分メモを挟む
- 当て方を変える(質問の粒度を小さく)
- NG:「どう思う?」
- OK:「A案の懸念、1つだけあるとしたら?」
- OK:「いま不安が0〜10なら何点?理由は一言で」
使える振り方(そのまま)
ポイントは、当てる前に“正解の形”を提示することです。形が見えると、発言コストが下がります。
強い人・否定が多い人:ルールと要約で“場の温度”を下げる
発言が強い人や否定が多い人がいると、場は一気に「評価モード」になり、沈黙が合理的になります。
対策は、人格に触れずに、場のルールと運用で温度を下げることです。
- ルールを“行動”で定義する(抽象で終わらせない)
「否定しない」だけだと曖昧- 例:「否定したくなったら、まず 懸念 として言う」
- 例:「反対意見は 代案セット で」
- 要約で“言葉の角”を削る(翻訳する)
強い言い方をそのまま流さず、司会が一段柔らかく言い換える- 例:「つまり懸念は○○ですね。改善案は△△で合ってますか」
- 発言形式を固定する(攻撃的になりにくい枠)
- 「良い点→懸念→提案」順にさせる
- 「事実→影響→提案(SBI寄り)」に寄せる
使える介入フレーズ(角を立てずに戻す)
“否定の連鎖”は、司会が要約と枠を差し込むだけで止まりやすいです。
強い人を黙らせるのではなく、出し方を変えてもらうのが最短です。
上司同席:最初に“上司から話さない”合意を取る(可能なら)
上司が同席すると沈黙が増えるのは、個人の性格ではなく権威勾配(上がいると評価不安が上がる構造)の影響です。
ここはフレーズ勝負より、順番設計で緩和するのが確実です。
- 最初に合意を取る(できれば会議冒頭で宣言)
- 例:「最初は現場から一周して、最後に○○さんにまとめをお願いします」
“上司を立てつつ、場を守る”言い方にする
- 例:「最初は現場から一周して、最後に○○さんにまとめをお願いします」
- 先に書かせる→拾う(上司の存在を薄める)
- サイレント記入→共有→司会が集約→上司コメント
→上司の一言が「結論」にならず、意見が出やすい
- サイレント記入→共有→司会が集約→上司コメント
- 上司の役割を“評価者”ではなく“意思決定者”に固定する
- 例:「判断材料を集める回です。最後に意思決定だけお願いします」
使える進行テンプレ(そのまま)
上司同席回は、“最初に上司が話す”だけで沈黙が固定化しやすいので、最初の順番を変えるだけで体感が変わります。
FAQ:会議で発言を促すときのよくある疑問
Q1|指名するとパワハラっぽくなりませんか?
結論:やり方次第でパワハラにはなりません。
理由:圧になるのは「逃げ道なしの指名」と「評価前提の空気」です。
「正解じゃなくて大丈夫です。仮で一言だけ、○○さんどう見えますか」
Q2|オンライン会議で沈黙が続くときはどうする?
結論:“書いてから話す”に切り替えるのが最短です。
理由:オンラインは間が読みづらく、発言の被りも怖くて黙りがちです。
「30秒だけ各自メモしましょう。終わったらチャットに一言で投げてください」
Q3|発言が偏るのを直す一番簡単な方法は?
結論:ラウンドロビン(順番に一言)が一番早いです。
理由:“話せる人だけ”の構造を、運用で止められます。
「一人30秒で順番にいきます。結論だけでOKです」
Q4|否定が多い人がいる会議はどう回す?
結論:ルール+要約で“否定を懸念に変換”します。
理由:否定が続くと評価モードになり、他の人が黙るからです。
「いまの話は“懸念点”として整理すると○○ですね。代案があればセットでお願いします」
Q5|沈黙を怖がらず待つべき時間はどれくらい?
結論:まずは5〜7秒は待ってOKです。
理由:沈黙は“考えている時間”でもあり、早く埋めるほど発言の質が落ちます。
「少し考える時間を取ります。10秒だけ待ってから順番にいきます」
まとめ|沈黙は「言い方」より“場の設計”で崩せる
今日から迷わない3つの基準(目的/観点/順番)
沈黙を崩すコツは、セリフを増やすことではありません。
まずは次の3点を先に決めるだけで、発言の出やすさが一気に上がります。
- 目的:今日は「決める」のか「案を出す」のか
- 観点:リスク/コスト/手戻りなど、答える切り口を渡す
- 順番:誰がいつ話すか(書く→共有、順番に一言、など)を固定する
迷ったら「選択式→1人→全体」の型に戻す
沈黙したときに効くのは、問いを細くして“最初の一言”を取りにいくことです。
- 選択式(A/B、優先はどっち)で答えやすくする
- 1人に「仮でOK」を添えて振る
- 全体に「他にもある?」で広げる
この型に戻すだけで、会議が「黙る場」から「出しやすい場」に戻ります。
早見表をブックマークして使い回す
沈黙対策は、その場のセンスより再現できる型が強いです。
目的別の「振り方早見表」は、会議のたびに見返せる“武器”になります。
ことのは先生よりひとこと

沈黙は失敗ではなく、場がまだ整っていない合図です。
言い方を工夫する前に、答えやすい問いと順番を用意するだけで、会議は驚くほど動きやすくなります。

