差し戻しの言い換え10選|責めない修正依頼の伝え方
差し戻しという言葉を使うと、必要な修正依頼でも相手が責められたように感じてしまうことがあります。
結果として、やり取りが増えたり、空気が悪くなったり、次から相談しづらくなったりしがちです。
一方で、言い換えだけを工夫しても「どこを・いつまでに・どう直すか」が曖昧だと、結局は手戻りが増えます。
大切なのは、相手の人格ではなく“作業”に焦点を当て、直しやすい情報をセットで渡すことです。
この記事では、差し戻しと言わずに修正をお願いするための考え方と、メール・チャットでそのまま使える表現を整理します。
差し戻しの意味と「きつく聞こえる」理由
差し戻しの意味:本来は「元に戻してやり直す」
差し戻しは、もともと「差し出したものを戻す」という意味の言葉です。
仕事の場では、申請書・資料・原稿などを「いったん戻して、修正して出し直してもらう」状態を指すことが多いでしょう。
ここで押さえたいのは、差し戻しが「修正すれば前に進む」前提の言葉だという点です。
しかし実務では、次のようなニュアンスも一緒に乗りやすくなります。
言葉としては便利でも、受け手は「ダメ出しされた」と感じやすい土台があります。
そのため、修正依頼の場面では差し戻しという言葉を使わないほうが、やり取りがなめらかになります。
ビジネスで角が立つのは「評価・責任」の匂いが出るから
差し戻しがきつく聞こえるのは、丁寧語が足りないからではありません。
多くの場合、相手が感じるのは「評価」と「責任」の匂いです。
たとえば「差し戻します」と言われると、受け手は次のように受け取りやすいです。
特に、相手が時間をかけて作ったものほど、人格評価のように刺さりやすくなります。
この防衛反応が起きると、修正の質よりも「言い方」や「正当性」の議論に移りやすく、手戻りが増えます。
だからこそ、責めない修正依頼では、主語を相手ではなく「要件」や「目的」に寄せます。
相手の能力ではなく、成果物を前に進めるための調整として伝えるのが安全です。
差し戻しと却下の違い:戻すのか、終わらせるのか
差し戻しと却下は、似ているようで意味がまったく違います。
ここを曖昧にすると、相手の受け取り方が極端に悪くなります。
差し戻しのつもりで言ったのに、相手が却下だと思うと、次が起きます。
逆に、却下すべき場面で差し戻しと言うと、期待を持たせて時間を奪ってしまいます。
修正依頼の文章では「修正すれば通るのか」「方針として通らないのか」を、どちらかに寄せて明確にすることが重要です。
次の章では、角を立てずに修正をお願いするための基本設計を、順番で整理します。
責めない修正依頼は「順番」で8割決まる
基本型:お礼(受領)→目的→修正点→やり方→期限→フォロー
修正依頼が刺さるかどうかは、言い換えより先に「順番」で決まります。
同じ内容でも、最初に受け止めがあるだけで相手の構えが下がり、修正が前に進みやすくなります。
おすすめの基本型はこの6要素です。
- お礼(受領):受け取ったこと、作ってくれたことへの感謝
- 目的:なぜ直す必要があるのか(何を達成したいのか)
- 修正点:どこを直すのか(箇所を特定)
- やり方:どう直すのか(基準・例・フォーマット)
- 期限:いつまでに必要か(優先度を含める)
- フォロー:質問歓迎、こちらがやること、確認の約束
この順番にすると、相手は「責められている」よりも「作業が整理された」と感じます。
結果として、次のメリットが出ます。
逆に、いきなり修正点から入ると、相手は「評価」だと受け取りやすいです。
受け止めは飾りではなく、修正に向けて相手の注意を切り替えるためのスイッチです。
指摘はSBIで「事実→影響」に寄せる(人格を触らない)
責めない修正依頼のコツは、人格ではなく事実を扱うことです。
このとき役に立つのが、SBIという整理です。
ポイントは、Bを「あなたが悪い」ではなく「成果物の状態」に置くことです。
たとえば同じ指摘でも、言い方の主語が変わるだけで刺さり方が変わります。
SBIにすると、相手は「否定された」ではなく「改善の理由が分かった」と受け取りやすいです。
この状態を作れれば、修正依頼は一気に通りやすくなります。
お願いはDESCで「提案→合意」に寄せる(命令にしない)
指摘の内容が正しくても、頼み方が命令に見えると反発が起きます。
そこで、依頼を「提案→合意」に寄せるために、DESCの型が使えます。
たとえば、修正依頼をDESCで組むとこうなります。
- D:提出ありがとうございます。本文の表記が章ごとに揺れているようです。
- E:読み手が迷わない形に整えたいです。
- S:表記はA案(社内ガイド)に統一していただけますか。
- C:もし統一が難しい箇所があれば、該当部分だけ教えてください。こちらで調整します。
最後に「選択」を置くと、相手は追い込まれにくくなります。
結果として、やり取りが対立ではなく共同作業に寄ります。
次の章では、差し戻しと言わずに伝えられる言い換えを、意図別に10個だけ厳選して整理します。

差し戻しの言い換え10選:意図別に選ぶのが正解
差し戻しの言い換えは、丁寧さを足すより「何をしてほしいか」で選ぶほうが失敗しません。
同じ修正依頼でも、意図が違うのに同じ言い方をすると、相手は動き方が分からず往復が増えます。
ここでは“羅列”にせず、意図→使いどころ→注意点の順に短く整理します。
軽微な修正(体裁・誤記・形式)に強い言い換え
軽い修正は、強い言葉ほど過剰に刺さります。
「差し戻し」と言わず、作業の小ささが伝わる言い方を選ぶのがコツです。
1)修正をお願いできますでしょうか
- 使いどころ:誤字、表記ゆれ、リンク切れなどの小さな修正
- 注意点:「どこを」を必ず添える(例:2ページ目の会社名表記)
2)体裁を整えるため、○○の形式に合わせていただけると助かります
- 使いどころ:フォーマット統一、テンプレ準拠、提出形式の調整
- 注意点:「基準」を置く(例:社内ガイド/先方指定のテンプレ)
3)念のため、○○のみ追記いただけますか
- 使いどころ:不足項目の追記、補足説明、注記の追加
- 注意点:「のみ」を使うなら本当に1点に絞る(増えると不信感が出る)
確認事項があるとき(不足情報・根拠・数値)に強い言い換え
確認が必要な場面で「修正してください」と言うと、相手は責められた気持ちになりやすいです。
この場合は「確認」という行為に寄せ、必要な情報を具体化すると角が立ちません。
4)確認したい点がございますので、○○をご確認ください
- 使いどころ:根拠、数値、参照元、判断材料が不足しているとき
- 注意点:「確認点」を箇条書きで1〜3点に絞る(長いと重い)
5)進行のため、○○について一度確認させてください
- 使いどころ:先に合意が必要な条件、仕様、方針のすり合わせ
- 注意点:「進行のため」を入れると、相手を責めずに目的が伝わる
6)判断に必要なため、○○をご共有いただけますでしょうか
- 使いどころ:資料・添付・スクショ・前提条件の不足
- 注意点:「判断に必要な理由」は1行で十分(長い説明は論点が増える)
差し替え・再提出が必要なときに強い言い換え
差し替えや再提出は相手の手間が大きいので、言い方より「何をすれば終わるか」が重要です。
修正点の特定と、再共有の方法までセットにすると揉めません。
7)最新版と差し替えをお願いいたします
- 使いどころ:最新版の取り違い、古いファイルの送付、差分反映漏れ
- 注意点:最新版の判別情報を添える(例:ファイル名、更新日時、版)
8)お手数ですが、修正版をご提出ください
- 使いどころ:提出物として正式に出し直してもらう必要があるとき
- 注意点:期限と提出先を明確に(例:本メールに返信/所定フォルダ)
9)いったんお戻ししますので、○○のご対応後に再共有をお願いします
- 使いどころ:ワークフロー上「戻す」処理が必要なとき
- 注意点:「戻す=拒否」ではないと分かるように、修正すれば進む前提を添える
実質NG(通らない)を伝えるときの“角が立たない”言い換え
通らない内容を曖昧にすると、相手は期待を持ったまま作業を続けてしまいます。
この場合は、相手を否定せず「要件・基準」を主語にして、次に進める形にします。
10)現状のままでは手続きが進められないため、○○のご対応をお願いいたします
- 使いどころ:要件未達、必須項目不足、基準違反で通せないとき
- 注意点:「通らない理由」は基準に寄せて短く(例:必須項目の不足/規定上必要)
実質NGは、丁寧語で包むより「何を満たせば進むか」を示すほうが優しい伝え方です。
次の章では、メール・社内チャットでこの言い換えをどう組み立てると刺さらないかを、媒体別に整理します。
シーン別:メール・社内チャットでの整え方
取引先メール:丁寧さより「相手の手間が減る書き方」
取引先に修正依頼を出すときは、丁寧語を増やすより「往復を減らす設計」が重要です。
相手にとって一番つらいのは、責められることより「何を直せば終わるのか分からない状態」です。
意識したいポイントは2つだけです。
修正箇所は、抽象的な評価ではなく「位置」と「基準」で示します。
期限は、命令にしないために「理由」を一言添えると刺さりにくくなります。
たとえば「社内確認が○日なので」「先方提出が○日なので」の1行で十分です。
メールは“相手の行動が一発で決まる”ことが正解です。
丁寧でも、相手が迷う文面は結局負担になります。
社内チャット:短文でも「次アクション」を置く
社内チャットはスピードが強みなので、長文は逆に読まれません。
その代わり、短くても「次アクション」を必ず置くと刺さりません。
基本はこの形で止めると安全です。
感情語や評価語は入れないほうが、空気が荒れません。
社内で角が立つのは、言葉の硬さより「責められた気配」です。
チャットでは特に、短文が冷たく見えやすいので、冒頭に一言だけ受け止めを置くと安定します。
この一言があるだけで、指摘が作業の話に戻ります。
急ぎのとき:圧をかけずに優先度を伝える
急ぎの修正依頼が刺さるのは、急かす言葉より「理由が見えないとき」です。
相手は急ぐ理由が分からないと、防衛的になりやすいです。
急ぎのときは、次の3点をセットにします。
- 理由:なぜ急ぐのか(提出・会議・審査など)
- いつまでに:締切(時間まで出せると強い)
- 代替案:全部は無理でも進められる選択肢
代替案を出すと、急ぎでも命令に見えにくくなります。
急ぎの修正依頼は、強い言葉で押すほど摩擦が増えます。
理由と選択肢を置くほうが、結果的に早く進むでしょう。
差し戻しを言わない修正依頼 早見表(保存用)
結論:丁寧語より「相手が動ける情報」が最重要
修正依頼で一番効くのは、丁寧語の追加ではありません。
相手が迷わず動けるだけの情報を、短くセットで渡すことです。
特に、次の3つが揃うと「責められている」ではなく「作業が整理されている」に変わります。
- どこを(修正点の特定)
- いつまでに(期限・優先度)
- 次にどうする(再共有方法・確認の流れ)
差し戻しが刺さるのは、言葉が強いからだけではなく、行動が決まらない不安が出るからです。
早見表は、その不安を一発で消すためのものです。

意図×最適表現×添える一文×避けたい言い方
「推奨表現」だけ真似すると曖昧になりやすいので、添える一文(次アクション)もセットで使うのがおすすめです。
| 意図 | 推奨表現 | 向く媒体 | 添える一文(次アクション) | 避けたい言い方 |
|---|---|---|---|---|
| 軽微修正 | 修正をお願いします | チャット/メール | 該当箇所は○ページの○行目です | 差し戻しです |
| 追加情報 | 確認したい点があります | メール | ○○をご共有ください | 不備があります |
| 再提出 | 修正版をご提出ください | メール | 期限:○/○(○)○時 | やり直してください |
| 差し替え | 最新版と差し替えをお願いします | チャット | 差し替え後に一言ください | これではダメです |
| 要件未達 | 進行のため○○が必要です | メール | 要件:○○/不足:○○ | 通りません |
表を使うときのコツは、避けたい言い方の共通点を知っておくことです。
それは「評価語」「断定」「相手主語」が混ざることです。
これらを避け、要件・目的・手順を主語にすると、同じ修正でも刺さりにくくなります。
迷ったときの判断フロー:意図→相手→次の一文
言い換えで迷うときは、順番を戻すのが一番早いです。
考えるのは3つだけで十分です。
- 何をしてほしい?(修正/追記/差し替え/再提出)
- いつまで?(期限・優先度)
- どこを?(修正点の特定)
この3点が決まると、言葉選びは自然に決まります。
次の章では、よくある失敗パターン(炎上する言い方)と、短く直すコツを整理します。
よくある失敗と直し方:差し戻しが炎上するパターン

NG:差し戻しです、だけ(相手が動けない)
「差し戻しです」だけで終わると、相手は次の3つが分からず止まります。
止まった結果、確認の往復が増え、相手のストレスも上がります。
この状態が続くと、修正内容より「言い方」「態度」の話にすり替わりやすく、炎上の火種になります。
直し方はシンプルで、修正点+期限+再共有方法を1セットにするだけです。
丁寧語を増やすより、相手の行動が決まる情報を足します。
短くても、相手は迷わず動けます。
修正依頼の目的は、相手を正すことではなく、成果物を前に進めることです。
NG:指摘が多すぎる(相手の心が折れる)
一度に指摘が多いと、相手は「全部ダメだった」と感じやすくなります。
その瞬間に、防衛反応が出て修正の質が下がります。
直し方は、Must/Shouldに分けて「まず3点」に絞ることです。
ここで大事なのは、Mustを“好み”で増やさないことです。
Mustは「要件」「期限」「相手への提出条件」に直結するものだけにします。
書き方の例としては、こういう整理が刺さりにくいです。
相手は優先順位が分かると、落ち着いて作業に戻れます。
NG:基準が曖昧(何が正解か分からない)
炎上の根本原因は、言葉の強さより「基準の曖昧さ」であることが多いです。
基準が曖昧だと、相手は直しても直しても終わりません。
直し方は、受け入れ基準を一文で固定することです。
細かい説明より、まず“ゴール”を明確にします。
基準が決まれば、修正点は「基準との差分」になり、話が感情から作業に戻ります。
差し戻しの言い換えに関するよくある質問(FAQ)
Q1|差し戻しという言葉は失礼ですか?
結論から言うと、言葉として失礼ではありません。
ただし実務では「不備がある」「通らない」という評価に聞こえやすく、相手との関係や状況次第で角が立つことがあります。
迷ったら、差し戻しと言わずに意図を言うのが安全です。
修正をお願いします/確認したい点があります/最新版と差し替えをお願いします
Q2|差し戻しと却下はどう違いますか?
結論は、差し戻しは修正すれば進む、却下は通さないです。
ここが曖昧だと、相手が「もう出さなくていいのか」「直せばいいのか」を誤解してトラブルになります。
迷ったら、次の一文を添えると誤解が減ります。
○○を直せば進められます/今回は要件上通せないため別案でお願いします
Q3|修正依頼で理由はどこまで書くべきですか?
結論は、1行で十分です。
長く説明すると論点が増え、「正しさの議論」になりやすくなります。
おすすめは「目的」か「基準」に寄せることです。
読み手が迷わないよう表記を統一したいです/社内規定上、出典の記載が必要です
Q4|指摘が多いとき、角が立たない順番はありますか?
結論は、Must(必須)→Should(できれば)→確認事項の順が無難です。
相手は優先順位が分かると、気持ちが折れにくくなります。
使える言い方はこれです。
まず必須3点だけお願いします。残りは時間があればで大丈夫です
Q5|口頭やチャットなら、どんな言い方が無難ですか?
結論は、短くても「次アクション」を入れる言い方が無難です。
言い換えより、相手が動ける情報があるかどうかが印象を決めます。
使える言い方はこれです。
ここだけ直して、修正版をもう一度共有お願いします/確認点が1つあるので、○○だけ教えてください
まとめ|差し戻しは「言い換え」より“相手が動ける情報”で整える
今日から迷わない3つの基準(意図/基準/期限)
差し戻しがきつく聞こえるのは、言葉選びの失敗というより、相手の頭の中に「やること」が組み上がらないときです。
迷わないために、次の3つだけ先に決めると整理がつきます。
この3点が揃うと、言い換えに悩む時間が減り、やり取りが作業に戻ります。
迷ったら「修正点→期限→再共有方法」に戻す
表現に迷ったときは、言い換えを探すより「順番」を戻すのが早いです。
最低限、次の3つをセットにすれば、多くの場面で炎上を避けられます。
短文でも、この3点があると相手は動けます。
逆に、この3点が欠けると、丁寧な言葉でも不親切に見えやすいです。
早見表をブックマークして使い回す
「差し戻し」と言わずに伝えるコツは、場当たりで言い換えることではなく、意図別に型を固定することです。
本記事の早見表は、迷ったときに“最短で安全な文”に戻すための道具として作っています。
使い回すほど、修正依頼が「気まずいイベント」ではなく「淡々と進む工程」になります。
ことのは先生よりひとこと

丁寧さは言葉を重くすることではなく、相手が直しやすい形に整えることです。
伝え方を少し変えるだけで、やり取りの疲れは大きく減るでしょう。

