感じの良い人の会話フレーズ20選 自然に信頼される話し方
「感じの良い人って、何が違うんだろう?」
同じことを話しているはずなのに、なぜか好印象を残す人と、そうでない人がいます。決定的な違いは、難しい話術ではなく「ちょっとした言い回し」と「相手を思った一言」にあります。
この記事では、ビジネスでも日常でも使える「感じの良い人」がよく使っている会話フレーズを、場面別に整理して紹介します。ただフレーズを並べるのではなく、「なぜその一言で印象が変わるのか」まで分かるように解説していきます。
この記事で分かること
- 感じの良い人と言われる人に共通する、会話スタンスと基本ルール
- 初対面・雑談・ねぎらい・意見が違う場面などで使える会話フレーズ20選
- 一言添えるだけで、相手の受け取り方がやわらかくなる言い回しのコツ
- ビジネスと日常で「ちょうどいい丁寧さ」に調整する考え方
- 今日から実践できる、会話フレーズの増やし方・身につけ方のステップ
「話し上手」にならなくても、「感じの良い人だな」と思ってもらうことは十分に可能です。まずは気になるフレーズから一つずつ、自分の言葉として取り入れてみてください。
感じの良い人と言われる人の共通点と会話の特徴

感じの良さは、特別おもしろい話ができるかどうかよりも、日常の一言一言の積み重ねで決まります。
見た目やキャラクターよりも、声の出し方や表情、言葉の選び方といった要素が合わさって、全体の印象が形づくられていきます。
第一印象を決める声・表情・言葉の組み合わせ
第一印象は、内容よりも先に、声のトーンや表情で決まることが少なくありません。
同じあいさつでも、少しだけ声を明るめにして、相手の方を向いて話すかどうかで、受け取られ方は大きく変わります。
ここで大事なのは、大げさに明るくふるまうことではなく、落ち着いたトーンの中に、相手への関心をにじませることです。
例えば、無表情で早口に事務的な言葉を並べると、内容が丁寧でも冷たく感じられる場合があります。
一方で、ゆっくりめの速さで、柔らかい語尾を添えると、同じ内容でも穏やかな印象になりやすいでしょう。
ビジネスの場では、はきはきしつつ落ち着いた声の高さが基本ラインになります。
日常会話では、そこに少しくだけた雰囲気を足して、相手が構えずに話しやすい空気を作ることがポイントです。
このように、声・表情・言葉の組み合わせを少しだけ意識するだけでも、会話全体の印象は安定してきます。
感じの良い人が大切にしている相手軸のスタンス
感じの良い人に共通しているのは、自分がどう見られるかよりも、相手がどう感じるかを基準に言葉を選んでいる点です。
同じ内容でも、相手が受け取りやすい形に言い換えたり、相手の立場を踏まえて一言を足したりする習慣があります。
例えば、いきなり意見をぶつけるのではなく、まずは相手の発言を受け止める一言を挟みます。
否定から入るのではなく、理解や共感から入ることで、たとえ違う意見を伝える場面でも、関係がとげとげしくなりにくくなります。
相手軸のスタンスは、大きなスピーチよりも、日々の短いやり取りの中でこそ表れます。
忙しそうな相手に声をかける際のクッション、ミスを指摘するときの言い方、意見が分かれたときの一呼吸。
こうした小さな瞬間の積み重ねが、結果として信頼感につながっていきます。
一言フレーズが空気を和らげるメカニズム
会話の中で交わされる短い一言には、場の空気を整える役割があります。
内容そのものを大きく変えるわけではなくても、前後に添える一フレーズによって、相手の受け止め方が和らぎます。
たとえば、仕事を頼む前に一言だけ気遣いの言葉を入れたり、意見を述べる前に相手の考えを尊重する一言を添えたりすると、同じ要件でも圧迫感が減ります。
この一言があるかどうかで、会話の雰囲気が攻撃的にも協力的にも変わってしまうことがあります。
ここから紹介していく二十のフレーズは、難しいテクニックではなく、こうしたクッションとして使える表現です。
要件そのものを変えるのではなく、要件の前後に短く添えることで、相手が安心して話しやすい空気をつくることを目指していきます。
感じの良い印象をつくる会話の基本ルール
感じの良い人は、特別なフレーズをたくさん知っているというよりも、日頃から共通した話し方のルールを大切にしています。
ここで押さえておきたいのは、どの場面にも応用できる三つの視点です。あとで紹介する具体的なフレーズも、この考え方に沿って選ぶことで、自然に使いやすくなります。
否定から入らない話し方
会話の最初の一言が、相手に与える印象を大きく左右します。
内容は同じでも、最初に でも や いや、そうじゃなくて から入るのか、まずは一度受け止めるのかで、空気の温度が変わります。
感じの良い人は、相手の意見に賛成できない場面でも、一度クッションを置きます。
たとえば、たしかにその考え方もありますね と一度受け止めてから、自分の視点を付け足します。
まず受け止め、それから意見を添えるという順番を守るだけでも、相手は話を聞いてもらえた感覚を持ちやすくなります。
この基本パターンができていると、後の章で扱う相手を立てるフレーズや、やわらかく意見を伝えるフレーズがより効果を発揮します。
どんな表現を選ぶにしても、いきなり否定から入らないというルールを土台にしておくことが大切です。
相手視点を示すひと言を添える
感じの良い会話には、相手の状況や気持ちを先に受け止める一言が含まれていることが多くあります。
たとえば、たしかにその点は難しいですね や、お忙しいところ恐れ入ります などの一言です。
相手の立場や状態を一度言葉にしてから本題に入ると、この人は自分の状況を分かろうとしてくれている、という安心感が生まれます。
内容そのものは変わらなくても、相手の目線に寄り添うひと言を挟むことで、信頼感が積み上がっていきます。
この考え方は、ビジネスだけでなく、友人や家族との会話にもそのまま応用できます。
忙しそうなときに声をかけるなら、今ちょっと立て込んでいるかもしれませんが などのひと言を添える。
相手が大変そうなときには、それは大変でしたね と一度気持ちを受け止める。
こうした短いフレーズが、全体の印象をやわらかく整えてくれます。
言い切らずに余地を残す表現を持つ
意見が違うときや、自分の考えを伝えたいときほど、断定的な言い方は強く響きやすくなります。
そこで役に立つのが、余地を残す表現です。
例えば、こうした方が良いかもしれません や、自分はこう感じているところがあります のような言い方です。
言い切らずに、あえてかもしれません、ように思います といった言葉を挟むことで、相手に考える余白を渡すことができます。
相手の意見を全否定するのではなく、一つの案として提示しているというニュアンスが伝わりやすくなります。
このあと紹介する具体的なフレーズも、自分の口調やキャラクターに合わせて、言い切り型と余地を残す型を選び分けると使いやすくなります。
強く主張したい場面でも、一度トーンを落としてやわらかい言い回しに変えてみる。
こうした小さな調整が、感じの良さを支える基本ルールになっていきます。
会話の始まりで印象が変わるフレーズ四選
会話の印象は、最初のひと言で大きく決まります。
中身の前に、相手の耳に最初に届くフレーズが、柔らかいかどうか。ここを整えておくと、そのあとの会話がぐっと進めやすくなります。
ここでは、ビジネスでも日常でも使いやすい四つの切り出しパターンを整理します。
挨拶に一言足す形、久しぶりの相手への声かけ、興味を示すフレーズ、忙しそうな相手への呼びかけ。
それぞれの場面で「感じが良い」と受け取られやすいポイントを確認していきましょう。
日常で使える感じの良い挨拶フレーズ
職場では、ついお疲れさまですだけで会話を始めがちです。
もちろん失礼ではありませんが、そこに一言足すだけで、ぐっと印象が変わります。
例えば
- いつもありがとうございます、助かっています。
- お時間いただきありがとうございます、少しだけご相談させてください。
といった言い方です。
お疲れさまですに続けて、いつもありがとうございます や 先日はご対応ありがとうございました のように、感謝を短く添えるのも有効です。
ポイントは、相手の行動を一つだけ具体的に入れることです。
いつも お世話になっております よりも、先日の打ち合わせのフォロー、ありがとうございます といった方が、気持ちが伝わりやすくなります。
日常会話でも、おはようございます だけで終わらせず、昨日は遅くまでお疲れさまでした のように一言足すと、相手への関心が自然に伝わります。
特別な表現を覚えるというより、挨拶に感謝やねぎらいを一行だけ重ねる意識が大切と言えるでしょう。
初対面や久しぶりの相手にかけるひと言
初めて会う相手や、久しぶりに会う相手には、緊張感が生まれやすいものです。
そこで、うれしさや安心の感情を短く言葉にしてから本題に入ると、距離が縮まりやすくなります。
例えば
- お目にかかれてうれしいです。
- お久しぶりです、お変わりなくお過ごしでしょうか。
といったフレーズです。
お会いできて光栄です といった大げさな表現でなくても、うれしい、安心しました のような一言を入れるだけで、相手は歓迎されていると感じやすくなります。
オンライン会議でも、今日はお時間いただきありがとうございます、画面越しにお話しできてうれしいです のように、状況を軽く言葉にすると空気が和らぎます。
久しぶりの相手には、以前の共通点に触れるのも効果的です。
たとえば、お久しぶりです、前回のプロジェクト以来ですね のように、共有している記憶を一つ出すと、自然に会話のきっかけが生まれるでしょう。
会話のきっかけをつくる興味を示すフレーズ
感じの良い人は、自分の話から入るよりも、相手の話に興味を示すところから会話を始めることが多いです。
そのときに役立つのが、少しだけ続きを促すフレーズです。
例えば
- 先ほどのお話、もう少し詳しく聞いてみたいです。
- もしよろしければ、その経緯も教えていただけますか。
といった言い方です。
質問が詰問のように聞こえないようにするには、もしよろしければ や 差し支えなければ といったクッションを添えることが有効です。
また、なぜ聞きたいのかを一言添えると、より自然になります。
先ほどの数字の考え方、とても参考になったので、もう少し詳しく聞いてみたいです のように伝えると、相手も安心して話しやすくなります。
このようなフレーズは、相手に 主役はあなたです というメッセージを送る役割も果たします。
話してもいいのだと感じてもらえると、会話の流れがスムーズになり、その後の信頼関係づくりにもつながっていきます。
忙しそうな相手への配慮を含んだ呼びかけフレーズ
明らかに忙しそうな相手に声をかけるときは、内容よりも先に、時間への配慮を言葉で示すことが大切です。
ここを省いてしまうと、どれだけ丁寧な敬語を使っても、押しつけがましく感じられることがあります。
使いやすいフレーズとしては
- お手すきのときに少しだけお話ししてもよろしいでしょうか。
- 今お時間いただいても問題ないでしょうか。
などがあります。
今すぐでなくて構いません、や、お忙しいところ恐れ入ります が前に入ると、相手の都合を優先しようとしている姿勢が伝わります。
また、少しだけ のような言い方を使う場合は、その後に三分ほど、や 一点だけ といった目安を添えると、相手も予定を組み立てやすくなります。
ビジネスシーンでは、特に上司や取引先に対して、時間の扱い方が印象を大きく左右します。
内容そのものよりも、最初のひと言でどれだけ配慮を示せているかを意識することで、同じお願いでも、より感じよく受け取ってもらえるでしょう。
相手の話を引き出す聞き上手フレーズ四選

感じの良い人は「話し上手」よりも「聞き上手」であることが多いです。
同じ相づちや質問でも、少し言い方を変えるだけで、相手が話しやすくなったり、もっと詳しく話してくれたりします。
ここでは、相手の話を引き出すための聞き方フレーズを四つのパターンに分けて整理します。
オープンクエスチョン、気持ちを受け止める相づち、尊重を伝えるひと言、内容を整理しながら確認するフレーズ。
どれも難しい表現ではありませんが、意識して使うことで「聞き方の印象」が大きく変わります。
話を促すオープンクエスチョンのひと言
相手の話を広げたいときには、「はい・いいえ」で終わらない質問が効果的です。
これが、いわゆるオープンクエスチョンです。
例えば
- どういう経緯だったのか、もう少し聞いてもいいですか。
- 一番大変だったところはどこでしたか。
といった聞き方です。
どんな流れでしたか、どんな点が印象に残りましたか のように、「どう」「どんな」と始まる質問は、自然と相手の説明を促します。
一方で、根掘り葉掘り聞きすぎると負担になるので、もしよろしければ や 差し支えなければ のようなクッションを前につけると、ぐっと聞きやすい印象になります。
ポイントは、相手が話しやすい範囲を尊重することです。
気になることを全て質問しようとせず、「ここだけ教えてもらえたらうれしい」という一箇所に絞って聞くと、相手も安心して応じやすくなります。
相手の気持ちを受け止める相づちフレーズ
感じの良い聞き方には、内容だけでなく「気持ちへの相づち」が含まれています。
単に そうなんですね と返すだけでなく、相手の感情に対して一言添えるイメージです。
例えば
- それは大変でしたね。
- それを聞いて安心しました。
といったフレーズです。
ここで大切なのは、事実ではなく、感情の方を受け止めていることです。
忙しかったんですね、それはご不安でしたよね のように、相手が感じていそうな気持ちをやさしく言葉にすると、「分かろうとしてくれている」と感じてもらいやすくなります。
ただし、言い過ぎると大げさに聞こえることもあります。
すごく大変でしたよね! と決めつけ過ぎず、少し控えめなトーンにしておくと、重くなりすぎず自然なバランスになります。
あくまで「共感のきっかけ」として、一言添えるイメージを持つと良いでしょう。
共感と尊重を同時に伝えるフレーズ
話を聞きながら、相手の考え方や経験に対して「敬意」を言葉にするのも、感じの良さにつながります。
ただ、持ち上げすぎるとわざとらしくなるため、自然に伝える表現を持っておくと安心です。
例えば
- その考え方、とても参考になります。
- そういう視点は持っていませんでした、勉強になります。
といったフレーズです。
すごいですね だけでは、具体的などこを評価しているのかが伝わりづらくなります。
その発想は自分にはなかったので参考になります のように、「自分との違い」と「学び」をセットで伝えると、相手も素直に受け取りやすくなります。
ビジネスの場でも、単に褒めるより、視点や工夫に注目して言葉にすると、自然な尊重が伝わります。
たとえば、数字の追い方が、とても勉強になります のように、相手のどの部分が参考になったのかを一言足すのがおすすめです。
話を整理しながら聞くときの確認フレーズ
情報量が多い話や、複数の論点が出てくる会話では、途中で一度整理しながら確認することが大切です。
このときに役立つのが、「要約+確認」のフレーズです。
例えば
- つまり、こういう理解でよろしいでしょうか。
- 私の理解が合っているか、確認させてください。
といった言い方です。
相手の話を一度自分なりにまとめてから確認すると、「きちんと聞いてくれている」という信頼につながります。
同時に、認識のずれを早い段階で修正できるため、後からのトラブル防止にも役立ちます。
ポイントは、決めつけずに「確認させてください」という形にしておくことです。
〜という理解をしているのですが、もし間違っていたら教えていただけますか のように、修正の余地を残しておくと、相手も安心して補足をしやすくなります。
このように、オープンクエスチョン、感情を受け止める相づち、敬意を伝える一言、要約しながらの確認フレーズを組み合わせることで、「聞き方そのもの」が感じの良い印象をつくっていきます。
ねぎらい・共感・感謝を伝えるフレーズ四選
感じの良い人は、相手の「がんばり」や「気持ち」にきちんと目を向けて、言葉で返しています。
特別なことを言っているわけではなく、少し丁寧にねぎらい、共感し、感謝を伝えているだけですが、その積み重ねが信頼感をつくります。
ここでは、ねぎらい・共感・感謝を伝える場面で使いやすいフレーズを四つの切り口(9〜12)に分けて整理します。
結果だけでなくプロセスをほめる、励ましと押しつけの線を引く、小さな配慮に気づく、一緒に前を向く――そんなスタンスを言葉にするイメージで見ていきます。
相手の努力をねぎらうひと言
人は「結果」だけで評価されるより、「そこに至るまでの過程」を見てもらえたときに、ぐっと報われた気持ちになります。
感じの良い人は、成果だけでなく、そこにかけた時間や工夫、気配りにも目を向けて言葉をかけています。
例としては、次のようなフレーズが使いやすいでしょう。
- ここまで進めてくださって、本当に助かりました。
- いつも細やかに対応していただきありがとうございます。
ポイントは、ここまで、細やかに といった言葉で「どの部分」を評価しているのかを少しだけ具体にすることです。
単に ありがとうございます だけで終わらせるより、資料の整理まで含めてくださって など、一部分でも良いのでプロセスに触れると、相手は「見ていてくれた」と感じやすくなります。
社内であれば、少しくだけたトーンで
いつもフォローありがとうございます、すごく助かっています。
のように言っても問題ありません。
一方、社外や取引先に対しては、
ここまで詳細にご対応いただき、誠にありがとうございます
のように、少しフォーマル寄りの言い方に整えると安心です。
同じねぎらいでも、相手との関係によって語尾や副詞を調整することが大切です。
気持ちに寄り添うひと言
感じの良い人は、状況だけでなく「その中で相手がどう感じていそうか」にも目を向けています。
負担の大きい業務や、プライベートも含めて大変そうなとき、単に お疲れさまです だけではなく、気持ちに寄り添う一言を添えるイメージです。
例えば、次のような表現があります。
- その状況でここまでされているのは、すごいことだと思います。
- 無理をなさらないでくださいね、何かあれば言ってください。
前者は、状況の厳しさに触れたうえで、今の努力を肯定するフレーズです。
大変ですね、だけで終わると重くなりますが、その上で ここまでされているのは本当にすごい と伝えることで、相手のがんばりを支える言葉になります。
後者は、体調や精神面の負担が心配なときに使いやすい言い方です。
ただし、無理しないでください のような言葉は、立場によっては「仕事量は変わらないのに」と受け取られてしまうこともあります。
ビジネスの場では、可能な範囲でこちら側の調整意図も添えながら、
難しいようであれば、スケジュールの見直しも含めて一緒に考えさせてください
のように、具体的なサポートの姿勢を示すと、押しつけになりにくくなります。
小さな配慮に感謝を示すフレーズ
感じの良い人は、目立つ成果だけでなく、ちょっとした気遣いや配慮にも気づき、「ありがとう」を言葉にしています。
飲み物を用意してくれた、メールに一言添えてくれた、会議の段取りを整えてくれた――そうした小さな行動に気づくこと自体が、信頼につながります。
例えば、こんなフレーズが使えます。
- お気遣いいただきありがとうございます、うれしかったです。
- 細かなところまで気にかけてくださり、感謝しています。
ここでのポイントは、気遣い という言葉で「相手の気持ち」に対して感謝していることを示す点です。
ものや結果そのものではなく、その背景にある「相手の思いやり」に光をあてて言葉を選ぶと、相手もあたたかく受け取りやすくなります。
日常シーンであれば、
わざわざ気にかけてくれてありがとう、すごくうれしかったです。
のように、少しくだけさせれば十分です。
ビジネスシーンでは、
ご配慮いただきありがとうございます、大変励みになりました
といった形に整えると、丁寧さを保ちながらも感情を伝えやすくなります。
失敗やトラブルの後に前向きさを示すひと言
失敗やトラブルが起きたとき、「責める言葉」ではなく「一緒に前を見る言葉」をかけられる人は、周囲からの信頼が厚くなります。
ミスをなかったことにはできませんが、その扱い方次第で、相手の心の負担は大きく変わります。
例えば、次のようなフレーズがあります。
- 共有してくださってありがとうございます、早めに気付けて良かったです。
- 今回のことを次に生かしていければと思います。
前者は、ミスを隠さず共有してくれたこと自体を評価しつつ、早い段階で気づけたことの価値を言葉にする表現です。
まず報告してくれたことに感謝を示すことで、「早めに相談しても大丈夫な相手」という安心感を相手に与えられます。
後者は、原因追及だけで終わらせず、これからどうするかに視線を向けるひと言です。
「今回のことを次に生かす」という視点を共有することで、責める雰囲気を和らげ、前向きに考える空気を作ることができます。
上司が部下に対して使う場合は、
今回の共有、早く知らせてくれて助かりました。一緒に次に生かしていきましょう。
のように、「一緒に」というスタンスを出すと、より安心感が生まれます。
同僚同士であれば、
教えてくれてありがとう、早めに分かって本当に良かったね。
と、少しフラットなトーンでも問題ありません。
いずれの立場でも、「ミスを責める」のではなく、「共有と改善を評価する」視点を言葉にできる人は、自然と「感じの良い人」として記憶に残っていきます。
意見が違う場面でも感じ良くいられるフレーズ四選
意見が食い違う瞬間こそ、その人の「感じの良さ」が表れます。
同じ内容を伝えるにしても、言い方ひとつで「敵対しているように聞こえる」のか、「一緒により良い案を探そうとしている」のかが大きく変わります。
ここでは、反対意見やお断りを伝えなければいけないときでも、相手への敬意や柔らかさを保てるフレーズを四つの場面に分けて紹介します。
まず受け止めてから自分の意見を伝えるフレーズ
意見が違うとき、いきなり「それは違います」「そうは思いません」と返してしまうと、相手は否定されたような印象を受けやすくなります。
感じの良い人は、まず「理解」や「一理ある」というスタート地点を共有してから、自分の考えをそっと添えています。
例えば、次のような言い方です。
- その考え方も一理あると思います。一方で、こういう懸念も感じています。
- おっしゃることは理解できますが、別の見方も共有させてください。
ポイントは、以下の二つです。
- 最初の一言で「相手の意見を受け止めている」ことを示す
- 一理あると思います
- おっしゃることは理解できます
- そのうえで「追加の視点」として自分の意見を出す
- 一方で〜という懸念もあります
- 別の見方も共有させてください
これにより、「あなたは間違っている」という対立構造ではなく、「同じテーマを別の角度から一緒に見ている」という雰囲気をつくることができます。
会議や打ち合わせでは、まず肯定・理解をワンクッション置いてから、自分の意見を述べるクセをつけると、空気がぐっと穏やかになります。
柔らかく方向性を変えたいときのフレーズ
「その案は採用しづらい」「今の流れから少し変えたい」といった場面では、相手のアイデアを真っ向から否定するのではなく、「視点を足す」「選択肢を増やす」言い方にすると、感じの良さを保ちやすくなります。
例えば、次のようなフレーズです。
- 少し視点を変えてみてもよいでしょうか。
- 別の案も検討してみても良さそうに感じます。
これらは、「今の案がダメ」という趣旨ではなく、「今の案も踏まえつつ、もう一歩広げたい」というニュアンスを持たせられる言い方です。
会議や打ち合わせで使うときは、続けて具体的な提案を添えるとスムーズです。
- 少し視点を変えてみてもよいでしょうか。
例えば、ユーザー側の負担という観点からも一度整理できると良さそうです。- 別の案も検討してみても良さそうに感じます。
現行案に加えて、AパターンとBパターンも比較できると判断しやすいかもしれません。
相手の案を土台として扱い、その上に「新しい選択肢を置いていく」ようなイメージでフレーズを選ぶと、対立感を抑えながら方向性を変えていくことができます。
断りや調整を伝えるときのフレーズ
依頼や提案を「受けられない」「そのままでは難しい」と伝えなければならない場面でも、感じの良い人は相手の顔を立てつつ、きちんとNOや調整を伝えています。
例えば、次のような表現があります。
- 大変心苦しいのですが、今回は見送らせていただければと思います。
- 現状の体制では難しいため、別案をご提案させてください。
ここで意識したいのは、以下の三点です。
- 断ることに対する「心苦しさ」を一言添える
- 大変心苦しいのですが
- せっかくのご提案ではございますが
- 「今回は」「現状では」といった限定の言葉を入れて、関係そのものを否定しない
- 今回は見送らせていただければと存じます
- 現状の体制では難しいため
- NOだけで終わらせず、「代わりの提案」「今後の可能性」を添える
- 別案をご提案させてください
- 体制が整いましたら、改めてご相談させてください
メールでは、ややフォーマルに整えて
大変心苦しいのですが、今回は見送らせていただければと存じます。
現状の体制では難しいため、別案をこちらからご提案させていただければ幸いです。
口頭であれば、少し柔らかく
せっかくのお話なのですが、今回は見送らせていただければと思います。
その代わりに、こちらの案でご一緒できないかご相談させてください。
のように、「断る」ことと「関係を大事にすること」を両立させる言い方を意識すると、印象が大きく変わります。
相手への敬意を残して締めるひと言
意見がぶつかったり、こちらが反対の立場を取ったりした後こそ、「最後のひと言」が大きな意味を持ちます。
そこで、反対や調整を伝えたあとに「敬意」と「感謝」をきちんと残せるフレーズを持っておくと安心です。
例えば、次のような言葉です。
- 率直なお考えを共有いただき、ありがとうございます。
- 貴重なご意見として、今後の検討に生かしてまいります。
これらのフレーズには、
- 自分とは違う考え方であっても、「率直に出してくれたこと」自体に感謝している
- すぐに採用はできなくても、「意見そのものは大切に扱う」という姿勢を示す
というメッセージが含まれています。
例えば会議の終盤で、
本日は率直なお考えを共有いただき、ありがとうございました。
いただいたご意見は、今後の検討にしっかり生かしてまいります。
とひと言添えるだけでも、「自分の意見が無視されたわけではない」と感じてもらいやすくなります。
反対意見や難しい話をしたあとに「感謝」で締めることで、会話の余韻が柔らかくなり、「感じの良さ」が記憶に残りやすくなります。
別れ際やフォローで信頼感を残すフレーズ四選

会話は「始まり」以上に「終わり方」で印象が決まることが少なくありません。
感じの良い人ほど、別れ際や会話のあとにそっと添えるひと言で、相手の記憶に良い余韻を残しています。
ここでは、対面・オンライン・チャットなど、さまざまな場面で使える「締め」と「フォロー」のフレーズを四つの切り口で紹介します。
会話の締めに使えるひと言
会話が一区切りついたとき、最後の数秒でどんな言葉を選ぶかによって、相手の心に残る印象は大きく変わります。
感じの良い人は、内容の良し悪しにかかわらず「時間を使ってくれたこと」そのものに感謝を伝えるひと言を欠かしません。
例えば、次のようなフレーズです。
- 今日はお時間をいただき、ありがとうございました。
- お話しできてとても参考になりました。
ポイントは、「時間」と「得られたもの」のどちらか、もしくは両方に触れることです。
- お時間をいただき → 相手の時間に対する敬意
- 参考になりました → 会話から得た学び・気づきへの感謝
ビジネスシーンでは、
- 本日はお時間をいただき、ありがとうございました。
- 本日のお話、大変参考になりました。
日常会話なら、
- 今日は話せてよかったです、ありがとう。
- 色々聞かせてもらって、すごく参考になったよ。
のように、場に合わせて丁寧さを少し調整すると自然です。
最後のひと言で「会えてよかった」「話せてよかった」というメッセージを伝えることで、その会話全体の印象がやわらかく上書きされます。
次のアクションにつなげるフレーズ
感じの良い人は、「話して終わり」にせず、さりげなく「次につながる一歩」を言葉にしています。
強い営業トークではなく、「続きがあればうれしい」というレベルの温度感で前向きな一文を添えるのがコツです。
例えば、次のようなフレーズが挙げられます。
- 続きはまた改めてご相談させてください。
- 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
これらのフレーズには、
- 今日の会話を一度区切りつつ、
- 今後も関わりを続けたい意志を、控えめに示す
という役割があります。
ビジネスで使う場合は、
- 本日の内容を踏まえ、続きはまた改めてご相談させてください。
- 今後とも変わらぬお付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします。
といった形で、「今日の話」と「今後の関係」をセットにして伝えると自然です。
営業色を強くしすぎないためには、「またご提案させてください」だけでなく、「ご相談させてください」「必要があればお声がけください」など、相手のペースも尊重する言い方を混ぜておくとバランスが取りやすくなります。
オンライン会議やチャット後に添えるフォローフレーズ
オンライン会議やチャットは、対面に比べて「温度感」が伝わりにくく、事務的な印象になりがちです。
そこで、終了後に一行だけでもフォローフレーズを添えることで、「画面越し」ならではの距離感を埋めることができます。
例としては、次のようなものがあります。
- 先ほどはオンラインでのお時間をありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
- チャットでのご対応、いつも助かっています。
ポイントは、以下の二つです。
- 「オンライン」「チャット」といったツール名をあえて入れる
- 先ほどのオンラインミーティングではチャットでのご対応
- 短文でも「感謝+今後」までを含める
- ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
- 助かっています。本当にありがとうございます。
オンライン会議のあとに、
本日はオンラインでのお時間をありがとうございました。資料は追って共有いたします。
社内チャットなら、
さきほどはチャットでのご対応ありがとうございます。とても助かりました。
といったように、一言だけでも「温度」のある言葉を足すことで、ドライになりがちなコミュニケーションを柔らかく整えることができます。
関係を長く続けたい相手への一言メッセージ
「この人とは今後も長く関わっていきたい」と感じたとき、感じの良い人はその気持ちを言葉にして、さりげなく関係の土台を強くしています。
具体的には、次のようなフレーズです。
- これからも学ばせていただきたいと思っています。
- 今後とも変わらぬお付き合いをいただけますと幸いです。
これらの言葉には、
- 相手を「先生」「先輩」として尊敬しているニュアンス
- 一度きりではなく、今後も関係を続けたいという意志
が含まれています。
ビジネスシーンでは、ややフォーマルにして、
- 今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
- 引き続き変わらぬお付き合いを賜れますと幸いです。
といったフレーズもよく使われます。
一方で、あまり重くならないようにしたい場合は、
- これからも色々と学ばせていただければうれしいです。
- 今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
と少し柔らかめに整えると、距離感を保ちながらも信頼のメッセージを伝えやすくなります。
大切なのは、「今日だけで完結させない」ひと言を、別れ際にそっと重ねることです。
それが積み重なることで、「また話したいと思える人」「長く付き合っていきたい人」という印象が自然と育っていきます。
まとめ 自然に信頼される会話フレーズを身につけるコツ
自分の口癖を一つだけ置き換えてみる
感じの良さは、いきなり話し方のすべてを変えなくても「よく口にしている一言」を見直すだけでも十分に変わります。
たとえば
- つい最初に「でも」と返してしまう
- 返事が「はい」「分かりました」だけで終わりがち
といった、自分でも自覚のある口癖を一つだけピックアップしてみてください。
この記事で紹介したフレーズの中から
- 自分のテンションやキャラクターに合っている
- すぐに現場で試せそうだと感じる
ものを一つ選び、その場面でだけ置き換えてみるのがおすすめです。
いきなり全部を「感じの良い言葉」にする必要はありません。
一つの口癖を少しだけ柔らかくする。
そのくらいの変化の方が、無理なく続けやすく、周りにも自然に受け入れられます。
場面別に「定番フレーズセット」を持つ
感じの良い人ほど、頭の中に「シーンごとの定番フレーズ」をいくつかストックしています。
たとえば
- 初対面や久しぶりに会う場面
- 仕事の相談や意見が分かれる場面
- 別れ際や会議の締めの場面
といったシーンごとに、2〜3個だけ「自分が使いやすい言葉」を決めておくイメージです。
ビジネスであれば
- 打ち合わせの始まりと終わりに使う言葉
- 意見が違う時に最初に添える一言
日常であれば
- 久しぶりに会う友人への声かけ
- 相手をねぎらうときの一言
といったように、それぞれで最低限のセットを持っておくと、実際の会話でとっさに言葉が出てきやすくなります。
全部覚えようとするのではなく
- よく遭遇する場面
- 自分が苦手に感じる場面
から優先して、少しずつ「場面別の引き出し」を増やしていくイメージで整理してみてください。
今日から試せる小さな練習ステップ
最後に、実際の会話でフレーズを定着させるための、小さなステップをまとめます。
まずは
- 明日から一つだけ使ってみるフレーズを決める
ことから始めてみてください。
初対面のあいさつでも、ねぎらいの一言でも構いません。
「この場面でこれを言ってみよう」と事前に決めておくだけで、実際の場面で口に出しやすくなります。
もしうまく言えなかったり、タイミングを逃してしまっても問題ありません。
後から
- こう言えばよかったかもしれない
- 次はこの言い方を試してみよう
と軽く振り返り、頭の中で言い換えバージョンを作っておくだけでも、次の機会に生きてきます。
大切なのは「一回で完璧に話すこと」ではなく
- 昨日より少し感じの良い一言が増えた
という小さな前進を積み重ねていく姿勢です。
その積み重ねが、気付いたときには「この人はいつも感じが良い」と周りから見えてくる土台になります。
ことのは先生よりひとこと

感じの良い話し方は、生まれつきのセンスではなく、日々の小さな言葉選びの積み重ねから育つもの。
まずは一つだけ「これなら言えそう」というフレーズを選んで、ほんの少しだけ話し方を変えてみるところから始めてみてください。


