ミスの指摘を角立てずに伝える|修正・確認依頼の言い方
相手のミスに気づいたとき、一番悩むのは「伝えないと困る。
でも言い方を間違えると関係が悪くなる」という点ではないでしょうか。
実際、同じ内容でも「間違っています」と断定するだけで、相手は責められた気持ちになり、防衛的になります。
すると本来の目的である修正や確認が進まず、やり取りが長引きやすくなります。
この問題は、丁寧語を足すだけでは解決しません。
ポイントは、相手の人格ではなく「事実」と「目的」に焦点を当て、相手が動きやすい情報の順番で伝えることです。少しの設計で、角を立てずに必要な修正を引き出せるようになります。
この記事で分かること
- ミスを指摘しても角が立ちにくい「確認→影響→依頼」の基本設計
- 指摘すべきミス/流してよいミスの判断基準(誤字脱字・数字・固有名詞など)
- 修正依頼・確認依頼を丁寧に伝える「5行設計」(配慮→事実→影響→依頼→逃げ道)
- 取引先・上司・同僚、メール・チャット別の言い方の使い分け
- NG例をその場で改善できるビフォーアフターの具体例
結論:ミスの指摘は責めなくていい。鍵は事実と目的の分離
ミスを見つけた瞬間、頭に浮かぶのは「早く直してもらわないと困る」です。
ただ、その焦りのまま言葉を選ぶと、相手には「責められた」「否定された」と伝わりやすくなります。
ここで押さえたい結論はシンプルです。
ミスの指摘は、相手を正すためではなく、仕事を前に進めるための確認作業です。
そのために有効なのが、事実(何がどう違うか)と目的(何を解決したいか)を分けることです。
この2つが分かれているだけで、同じ内容でも受け取りやすくなります。
「間違えています」は避ける。断定が相手の自尊心を刺激する
「間違えています」「違います」は、情報としては早いのですが、相手の感情には強く刺さります。
相手が反論したくなるのは、性格の問題というより、自尊心を守る反応が働くからです。
断定されると、人は次のように感じやすくなります。
- 自分の能力を否定された気がする
- 立場が下になったように感じる
- まず言い返したくなる(修正が後回しになる)
だから、直接表現を避けて、確認・照会の形に寄せる方が結果的に早く進みます。
たとえば、同じ内容でも次の差があります。
確認にすると、相手は「指摘された」ではなく「一緒に整える作業」として受け取りやすくなります。
責めずに伝わる人は「あなた」ではなく「事実」に焦点を置く
角が立つ指摘は、言葉の中に「あなた」が混ざりやすいです。
逆に、うまく伝わる人は、主語を「あなた」から外して、事実に寄せています。
この違いは大きいです。
前者は人格評価に見えやすく、後者は作業の話に留まります。
事実に寄せるときのコツは、場所と状態を具体化することです。
「誰が悪いか」ではなく、「何が起きているか」に焦点が移るだけで、空気が穏やかになります。
迷ったら「確認→影響→依頼」の順に並べる
言い方に迷ったときは、順番を固定すると失敗が減ります。
おすすめはこの3つです。
- 確認:事実を照会する
- 影響:なぜ直す必要があるかを短く添える
- 依頼:相手にしてほしい行動を明確にする(期限は目安でも)
例として、型に沿うとこのようになります。
- 確認:念のため確認ですが、見積の合計が「A」と「B」で異なるようです。
- 影響:このままだと金額確定ができないため、
- 依頼:お手数ですが、正しい金額をご教示いただけますでしょうか。(本日中が目安です)
この順番は、相手の負担を減らします。
先に確認が来るので防衛反応が出にくく、影響があるので納得しやすく、最後に依頼があるので動きやすいからです。
「丁寧に言おう」と考えるほど文章は長くなりがちですが、必要なのは丁寧語よりも相手が迷わない設計です。
なぜ角が立つ?相手の防衛反応が起きる3つの条件
ミスの指摘が難しいのは、内容そのものよりも「受け取り方」に揺れが出るからです。
相手が素直に直してくれないとき、こちらは「ただ事実を伝えただけ」と思いがちですが、相手の中では別のスイッチが入っています。
それが、防衛反応です。
防衛反応が起きると、相手は「修正」より先に「自分を守る」モードになります。結果として、やり取りが長引き、関係性も微妙になりやすいです。
角が立つ指摘には、だいたい共通する条件が3つあります。
断定・決めつけが入ると反論したくなる
断定は早いのですが、相手の選択肢を奪います。
選択肢がない言い方は、「否定された」「押し付けられた」と感じやすく、反論のスイッチを入れます。
たとえば、次の違いです。
- 断定:この記載は誤りです。
- 確認:念のため確認ですが、この記載は○○という理解で合っていますでしょうか。
後者は遠回りに見えますが、実務では結果的に早く進みやすいです。
相手が「間違えた」と認める前に、「確認なら答えられる」状態を作れるからです。
断定が強くなる典型は、次の3つです。
指摘を「事実の照会」に落とすだけで、反論の確率は下がります。
公開の場(CC・会議)での指摘は恥をかかせやすい
内容が正しくても、場が悪いと角が立ちます。
人は、他者の前で間違いを指摘されると「面子」を守ろうとします。
CC入りのメールや会議中の指摘で、急に空気が硬くなるのはこのためです。
相手が修正より先に「自分の立場を守る」方向へ動きます。
公開の場での指摘が起こしやすい問題は次の通りです。
対策はシンプルで、まずは場を分けることです。
指摘の上手さは、言葉選びだけでなく「どこで言うか」の設計で決まります。
人格評価に見える言い方が信頼を削る(例:確認不足ですね)
角が立つ指摘の多くは、相手にこう聞こえています。
- あなたが悪い
- あなたの能力の問題
- ちゃんとしていない
こちらはそんな意図がなくても、「確認不足ですね」「普通はこうしますよね」「ちゃんと見ましたか」は、人格評価に近づきやすいです。
一度こう聞こえると、相手は修正しても「納得」ではなく「屈服」になり、関係性にしこりが残ります。
同じ指摘でも、主語を変えるだけで印象は大きく変わります。
ポイントは、相手の態度を評価せず、事実だけを扱うことです。
「誰がどうした」ではなく、「どこで何が起きているか」に寄せるほど、信頼は保たれます。
この3条件(断定・公開・人格評価)を避けるだけで、指摘の難易度は一段下がります。
次の章では、「指摘すべきミス」と「流してよいミス」の線引きを整理し、無用な摩擦をさらに減らしていきます。
先に判断する:指摘すべきミス/流してよいミス
ミスの指摘で一番もったいないのは、「言わなくても困らないこと」に労力と摩擦を使うことです。
逆に、放置すると後で痛いのは、数字や条件などの“成果物の正しさ”に直結する部分でしょう。
この章では、指摘の優先順位を先に整理します。
ここが決まると、言い方もブレにくくなります。
数字・固有名詞・条件の誤りは早めに確認する
指摘すべきミスの代表は、後から修正コストが跳ねるものです。
とくに次は、早めに確認した方が安全です。
この手のミスは、本人に悪意がなくても起こります。
だからこそ「責め」ではなく、事故防止としての確認に寄せるのが合理的です。
重要でない誤字脱字は、あえて指摘しない選択肢もある
誤字脱字を見つけると、つい全部直したくなります。
ただ、影響が小さいものまで拾うと、相手にはこう伝わりがちです。
- 細かい揚げ足取りをされた
- 本筋よりミス探しに見える
- 返信コストが増える(心理的に面倒になる)
たとえば、社内の一時的なメモや、関係者だけが読むチャットなら、軽微な誤字脱字はスルーでも実害がない場合が多いでしょう。
「正確さ」より「前に進む」を優先した方が良い局面もあります。
ただし例外があります。
誤字でも意味が変わる(否定が抜ける、数量が変わる、固有名詞が変わる)場合は、軽微に見えても早めに確認した方が安全です。
「直してほしい」より「意図を確認したい」に変換する
相手のミスを“修正依頼”として投げると、相手は「責められた」と感じやすくなります。
一方で、同じ内容でも「意図の確認」に置き換えると、防衛反応が起きにくいです。
違いは、相手に残る印象です。
意図確認にすると、相手が取りやすい行動が増えます。
「誤りでした、直します」だけでなく、「この前提で合っています」「最新版は別です」といった形で、自然に整理が進みます。
実務で効くコツは3つです。
- 場所を特定する(P3の合計欄/2段落目の数字など)
- こちらの理解を添える(私は○○と理解しています)
- 相手に選択肢を残す(合っていればそのままで大丈夫です)
この時点で、次章の「配慮→事実→影響→依頼→逃げ道」にもつながっていきます。
指摘すべき/流してよいの早見表
| ミスの種類 | 影響度 | 推奨スタンス(指摘/確認/スルー) | 理由 | 一言例 |
|---|---|---|---|---|
| 金額・合計・数量のズレ | 高 | 確認 | 後工程と信用に直結 | 念のため、合計が○○で合っているかご確認いただけますか。 |
| 日付・期限・納期の誤り | 高 | 確認 | スケジュール事故になりやすい | 期限が○日になっていますが、○日認識で合っていますでしょうか。 |
| 社名・人名・商品名の誤り | 高 | 確認 | 相手の尊厳・信用に触れやすい | 表記が「A社」となっていますが、「B社」でよろしいでしょうか。 |
| 条件・仕様・範囲の抜け/ズレ | 高 | 確認 | 認識ズレが後で拡大 | 対象範囲に○○も含む想定で合っていますか。 |
| 添付の版違い・差し替え漏れ | 中〜高 | 確認 | 最新が不明になり混乱 | 念のため確認ですが、添付は最新版(v2)で合っていますか。 |
| 重要語の誤り(否定の抜け等) | 中〜高 | 確認 | 意味が逆転することがある | 文意が変わりそうなので、○○の意図で合っていますでしょうか。 |
| 軽微な誤字脱字(意味は通る) | 低 | スルー | 摩擦とコストが先に立つ | (指摘しない/必要なら最後にまとめて) |
| 体裁(句読点・改行・表記ゆれ) | 低〜中 | 指摘(必要時) | 対外文書なら品質に影響 | 体裁を整えるため、表記を統一してもよろしいでしょうか。 |
次は、この判断を前提に、角を立てずに通る「5行設計」を具体化していきます。
責めずに直せる「5行設計」:配慮→事実→影響→依頼→逃げ道
ミスの指摘がうまくいくかどうかは、語彙よりも「組み立て」で決まります。
丁寧語を重ねても、順番が悪いと角が立ちます。逆に、短文でも順番が整っていれば、相手は動きやすいです。
そこで使えるのが、どの媒体でも応用できる「5行設計」です。
- 配慮(相手の心理的抵抗を下げる)
- 事実(何が起きているかを一点だけ)
- 影響(なぜ直す必要があるか)
- 依頼(相手にしてほしい行動)
- 逃げ道(難しい場合の選択肢)
この順番で書くと、相手は「責められた」ではなく「整える作業」として受け取りやすくなります。
配慮:恐れ入りますが/念のための確認ですが
最初の一行は、内容の正しさよりも、相手の受け取り方を決めます。
ここで強く出ると、その後がどれだけ丁寧でも回復が難しくなります。
配慮の役割は、次の2つです。
使いやすいのは、クッション言葉+断定回避の組み合わせです。
重要なのは、長くしないことです。
配慮は一行で十分で、ここが長いほど相手は「何か責められるのでは」と身構えます。
事実:どこがどう違うかを一点だけ示す(行・ページ・項目)
次に書くのは、主観ではなく事実です。
ここでやりがちなのが、ミスを並べてしまうことです。大量に指摘すると、相手は一気に防衛モードに入ります。
事実は「一点だけ」に絞ります。
そして、相手がすぐ確認できるよう、場所を特定します。
コツは「正しい答え」を決めつけないことです。
「違う」ではなく「異なるようです」「合っていますでしょうか」に寄せると、相手は反論ではなく確認に動けます。
影響:なぜ直す必要があるかを短く(相手の納得が上がる)
事実だけだと、相手は「細かい指摘?」と感じることがあります。
そこで、影響を1行添えると納得度が上がります。
ここでの影響は、責めるためではなく目的の共有です。
長文にせず、一行で足します。
「こちらの都合」でも構いません。
理由があるだけで、相手は「修正する意味」を理解しやすくなります。
依頼:修正・確認・差し替えを明確に(期限は目安でも)
次は、相手にしてほしい行動をはっきり書きます。
曖昧にすると、相手は「結局どうすれば?」と迷います。
依頼は、次のどれかに寄せると整理されます。
例です。
期限は「目安」で十分です。
期限がないと優先順位が下がり、返信待ちが長引きます。
逃げ道:難しければ代替案、または一言返信だけでも
最後に置くと強いのが「逃げ道」です。
逃げ道があると、相手は「断ったら悪い」という圧から解放され、結果的に返信率が上がります。
逃げ道の作り方は2種類あります。
1)代替案を出す
2)最小返信を許可する
この一文があるだけで、相手は「無視」ではなく「短く返す」選択ができます。
関係性を守りながら前に進めたいときほど、効きます。
5行設計の完成形(短い例)
次は、この5行設計をベースに、取引先・上司・同僚、メール・チャットなど場面別に「どの表現が安全か」を整理していきます。

場面別:修正依頼・確認依頼を角立てずに言う
「責めない言い方」は共通していても、相手と媒体が変わると“効くポイント”が変わります。
取引先は礼儀と誤解防止が最優先。上司は判断の負担を減らすのが効く。
同僚はスピード優先でも、刺さる言い方だけ避ければ十分でしょう。
そしてチャットは、短文ゆえに誤解が増えます。
同じ一文でも、受け手の温度感で「詰められている」に見えやすいからです。
ここでは、言い換えを並べるのではなく、目的→相手→媒体で選べるように整理します。
基本思想は一つだけです。指摘ではなく、丁寧な確認に寄せるほど摩擦が減るということです。
取引先:確認ベース+敬語で安全運転(断定しない)
社外は、正しさよりもまず信頼が優先されます。
「違います」「誤りです」を避け、照会(合っていますか)に落とすのが安全です。
- クッション言葉(恐れ入りますが/念のため)を先に置く
- 場所を特定し、事実を一点だけ
- 依頼は「ご教示」「ご確認」で閉じる
- 期限は“目安”にする(強制にしない)
上司:結論と選択肢を添えて判断負担を減らす
上司への連絡で重要なのは、丁寧さ以上に「判断しやすさ」です。
ミスの指摘をそのまま投げると、上司は「何を決めればいい?」になりやすいです。
そこで、結論(現状)+選択肢(A/B)+確認の形が効きます。
同僚:スピード優先でも、責めのニュアンスを抜く
同僚相手はテンポが大事なので、長い敬語は不要な場面も多いです。
ただし短文ほど刺さるので、主語を「あなた」にしないのがポイントです。
「かも」「念のため」を足すだけで、防衛反応が下がります。
チャット:短文ほど誤解が増えるので「理由か期限」を足す
チャットは、丁寧語よりも補助情報が重要です。
短文だけだと、受け手は背景を補完できず、「詰められている」と感じやすいです。
そこで、短くても次のどちらかを足します。
- 理由(なぜ今確認したいか)
- 期限(いつまでに必要か)
例

目的→相手→媒体で選べる「角が立たない言い方」表
| 目的(確認/修正/差し替え/再送) | 向く相手(取引先/上司/同僚) | 媒体(メール/チャット/口頭) | 推奨フレーズ | 短い例文 | 角が立ちにくい理由 |
|---|---|---|---|---|---|
| 確認 | 取引先 | メール | 恐れ入りますが、念のため確認させてください | 恐れ入りますが、P2合計欄の金額は○○円で合っていますでしょうか。 | 断定せず照会に落としている |
| 確認 | 取引先 | メール | こちらの理解で相違ないか、ご確認ください | 念のため、当方の理解が相違ないかご確認いただけますと幸いです。 | “誤解防止”の目的が伝わる |
| 修正 | 取引先 | メール | お手数ですが、該当箇所のみ修正のうえ | お手数ですが、社名表記のみ修正いただき再送をお願いできますでしょうか。 | 修正範囲が限定され負担が小さい |
| 差し替え | 取引先 | メール | 最新版に差し替えていただけますでしょうか | 恐れ入りますが、添付を最新版(v2)へ差し替えていただけますでしょうか。 | “最新版確認”に寄り、責めが出ない |
| 再送 | 取引先 | メール | 念のため再送いたします/行き違いでしたら失礼いたしました | 先ほどの添付について、念のため再送いたします。行き違いでしたら失礼いたしました。 | 相手の落ち度を前提にしない |
| 確認 | 上司 | メール | 結論:〜の認識で進めてよいでしょうか | 合計が一致していないため、A案(○○円)で進めてよいでしょうか。 | 判断負担を減らす(選択肢提示) |
| 修正 | 上司 | 口頭/チャット | 念のため共有:ここだけ直すと整います | 念のため、社名表記だけ直すと提出用として整います。 | 指摘ではなく“整える提案”になる |
| 差し替え | 上司 | メール | こちらで差し替えて進めてもよいでしょうか | もしよろしければ、こちらで最新版に差し替えて進めてもよろしいでしょうか。 | 相手の手間を減らしやすい |
| 確認 | 同僚 | チャット | 念のため確認なんだけど | 念のため確認なんだけど、合計って○○円で合ってる? | “念のため”で圧を下げる |
| 修正 | 同僚 | チャット | ここだけ直してもらえる? | ここ、社名がAになってるのでBに直してもらえる? | 場所と修正点が具体で早い |
| 差し替え | 同僚 | チャット | 最新版ってどれだっけ? | 最新版ってv2で合ってる?合ってたらそれで差し替えるね。 | 共同作業の形になり責めにくい |
| 再送 | 同僚 | チャット | もう一度送るね(行き違いかも) | 行き違いかもなので、もう一度送るね。 | 相手のミス前提を避ける |
| 確認 | 同僚 | 口頭 | ここだけ確認してもいい? | ここだけ確認していい?数字が合ってるかだけ見たい。 | 目的が明確で短い |
| 確認 | 取引先/上司/同僚 | チャット | ○時までに一言もらえると助かる | すみません、○時までに一言もらえると助かります(提出があるので)。 | 短文でも理由/期限があり誤解が減る |
| 修正 | 取引先/上司/同僚 | チャット | 難しければその旨だけでも | もし修正が難しければ、その旨だけでもご連絡いただけると助かります。 | 逃げ道で圧を下げ返信率が上がる |
この表は「例文集」で終わらせず、どのフレーズにも共通する原則(確認ベース、場所特定、理由か期限、逃げ道)を紐づけています。
次は、同じ要件でも角が立つNG文を、5行設計でその場で直せるように“ビフォーアフター”で整理していきます。
NG例→改善例:同じ要件でも「言い方の順番」で印象が変わる

ミスの指摘で角が立つとき、多くは「内容」ではなく「順番」が原因です。
いきなり結論(間違い)から入ると、相手は自尊心を守るために反論モードになります。
逆に、先に配慮と事実を置き、影響と依頼で締めるだけで、同じ要件でも驚くほど通りやすくなります。
ここでは、SNSでも共有されやすいように、ビフォーアフターでその場で直せる形に落とします。
NG:間違えています → 改善:念のため確認ですが
「間違えています」は、短くて分かりやすい反面、相手には断定・否定として刺さりやすいです。
さらに「あなたが悪い」に聞こえやすく、会話が修正ではなく弁明に流れます。
改善のコツは、断定を“確認”に落とし、場所を特定することです。
この一文だけで、相手が取りやすい行動が「反論」から「確認」へ変わります。
NG:修正してください → 改善:修正をお願いできますでしょうか(理由添え)
「修正してください」は、要件としては正しいのですが、相手の心理では「命令」に寄ります。
特に社外・目上相手では、言い方次第で関係性コストが上がります。
改善のコツは、依頼形にして、理由を1行だけ添えることです。
理由があると、相手は「直す意味」を理解し、受け身になりにくいです。
「誤解防止」「社外提出用」「金額確定のため」など、理由は短くて十分です。
NG:とにかく急いで → 改善:目安期限+難しい場合の連絡
「急いで」「至急」は、相手の都合を無視しているように聞こえることがあります。
特に期限がない急かしは、相手にとっては最もやりにくい依頼です。
改善のコツは、目安期限を置き、逃げ道(難しい場合)を用意することです。
相手は「できる/できない」を返しやすくなり、無視が起きにくくなります。
NG→改善の早見表(どこを足せば直るか)
| NG文 | 刺さる理由(断定/人格化/曖昧) | 改善文(5行設計のどこを足したか) |
|---|---|---|
| 間違えています。 | 断定で否定に聞こえる(反論を招く) | 念のため確認ですが、P2の○○は△△という理解で合っていますでしょうか。(配慮+事実) |
| それ違います。直してください。 | 断定+命令で圧が出る | 恐れ入りますが、誤解を避けるため、該当箇所のみ修正いただけますでしょうか。(配慮+影響+依頼) |
| 確認不足ですね。 | 人格評価に見える(信頼を削る) | P3の数値が一致していないようです。念のためご確認いただけますか。(事実+配慮) |
| 早く返してください。 | 急かしだけで負担が増える(期限不明) | 本日○時までを目安にご返信いただけますと助かります。(期限+依頼) |
| とにかく急いでお願いします。 | 曖昧で優先度だけ押し付ける | 〇時までに確定したく、確認をお願いできますか。難しければ目安だけでも一言ください。(影響+期限+逃げ道) |
| もう一回送ってください。 | 相手の落ち度前提に聞こえやすい | 行き違いでしたら失礼いたしました。念のため、最新版のご共有をお願いできますでしょうか。(配慮+依頼) |
| 何度言えば分かるんですか。 | 人格攻撃に近い(関係破壊) | 認識を揃えたく、前提だけ確認させてください。現状はAでよろしいでしょうか。(配慮+事実+確認) |
この章の要点は、「言い換え」よりも 5行設計の不足箇所を補うことです。
次は、相手が動けない・自分もイライラしているなど、摩擦が起きやすい場面でも崩れない“返し方”をFAQで整理していきます。
相手のミスを責めずに指摘する言い方に関するよくある質問(FAQ)
Q1|「間違っているようです」は回りくどい?失礼にならない?
回りくどいというより、断定を避けて誤解の余地を残すための実務的な表現です。
失礼ではありません。むしろ社外や目上に対しては、安全性が高い言い方でしょう。
ポイントは、「曖昧にする」ことではなく、断定を避けつつ、事実は具体にすることです。
言い方が柔らかくても、場所と差分が明確なら相手は動けます。
「ようです」を使う場合は、セットで“根拠(場所・項目)”を添えるのがコツです。
Q2|CCに入れるべき?相手の顔を立てる運用は?
原則は、解決に必要な人だけに共有です。
CCは便利ですが、入れ方を間違えると「公開処刑」に見えやすく、防衛反応を強めます。
判断の目安は次の通りです。
- CCを入れる方が良い:納期・金額・契約など、影響が大きく、関係者が判断や承認を必要とする
- CCは避けたい:軽微な修正、本人が直せば済む内容、相手のミスが目立つ内容
相手の顔を立てる運用としては、次が安全です。
- まずは本人宛てに個別で確認・修正依頼
- 関係者共有が必要なら、CCではなく「状況共有」として事実だけを淡々と連絡
- 表現は「ミス」ではなく「確認」「表記統一」「差分があるようです」に寄せる
例(関係者共有が必要な場合)
個人の落ち度に焦点を当てず、プロセス(確認中)に寄せると摩擦が減ります。
Q3|誤字脱字も指摘するべき?どこまでが適切?
基準はシンプルで、影響があるかどうかです。
誤字脱字すべてを拾うと、相手は「粗探しされた」と感じやすくなります。
伝え方は「指摘」ではなく「品質の確認」に寄せると角が立ちにくいです。
Q4|添付ファイルの差し替え依頼で角が立たない件名は?
件名は、感情ではなく要件と行動が伝わる形が最も安全です。
「至急」「重要」を多用するより、何を・どうしてほしいかを入れた方が開封率も上がります。
本文では「行き違いでしたら失礼いたしました」を添えると、相手の落ち度前提に見えにくくなります。
Q5|相手が不機嫌そう。火消しせず修正してもらうには?
不機嫌な相手に対しては、機嫌取りよりも、摩擦が起きにくい設計に戻す方が効果的です。
火消し(過剰な謝罪や言い訳)をすると、論点がズレて余計にこじれることがあります。
コツは3つです。
- 感情ではなく事実に戻す(一点だけ・場所特定)
- 相手の負担を下げる(修正範囲を限定、必要ならこちらで対応案を出す)
- 逃げ道を用意する(難しければ一言、代替案)
例(相手が刺さりやすい状況向け)
相手の機嫌を直すことを目的にせず、相手が動ける形に整える。
これが、関係を崩さずに修正してもらう最短ルートです。
まとめ|指摘は「責める」ではなく「前に進める」ための合図
事実と目的を分ければ、相手は受け取りやすい
ミスの指摘で揉めやすいのは、「正しさ」よりも「伝わり方」です。
相手を主語にせず、事実を一点に絞り、目的(なぜ直す必要があるか)を添えるだけで、受け取りやすさが上がります。
5行設計(配慮→事実→影響→依頼→逃げ道)を型にする
迷ったら、言い換えを探す前に順番を整えるのが確実です。
配慮を先に置き、事実を特定し、影響を短く示し、依頼を明確にし、難しい場合の連絡ルートを添える。
この「5行設計」は、メールでもチャットでも口頭でも使える汎用の型になります。
重要度の判断ができるほど、摩擦は減る
すべてを正そうとすると、相手は防衛に回り、関係コストが増えます。
数字・条件・固有名詞など影響が大きいものは早めに確認し、軽微な誤字脱字は流す判断も持つ。
指摘の精度が上がるほど、「必要なときだけ伝える人」という信頼が積み上がります。
ことのは先生よりひとこと

言いづらいことを伝えるのは、あなたが気を配っている証拠です。
責める言葉を選ばなくても、順番と一言の配慮を足せば、きちんと前に進められます。


