よろしくお願いいたしますに添える一言例 仕事で使える締めの言葉集

よろしくお願いいたしますに添える一言例 仕事で使える締めの言葉集 言い換え・表現辞典

よろしくお願いいたしますに添える一言例 仕事で使える締めの言葉集

ビジネスメールを書くとき、結びがいつも同じ文になっていないでしょうか。
とりあえず最後は よろしくお願いいたします として送信してしまう。
そんな習慣になっている人は多いと思います。

この一文自体は、ビジネスでとても大事なフレーズです。
問題になるのは、どんな相手にも、どんな用件にも、同じ形で使い続けてしまうこと。
依頼の重さも、感謝の気持ちも、状況の違いも伝わりにくくなり、事務的な印象が強くなってしまいます。

少しだけ一言を添えると、相手が受け取る印象は変わります。
何をしてほしいのか。どこに感謝しているのか。どれくらい負担をかけているのか。
その一部分を短く言葉にするだけで、メールの締めが「いつもの型」から「相手に向けたひとこと」に変わっていくはずです。

この記事では、よろしくお願いいたしますに添えるひとことを、場面別に整理していきます
ビジネスメールだけでなく、社内チャットや口頭での締めにも応用できる形でまとめます。

この記事で分かること

  • よろしくお願いいたしますが持つ基本的な意味と、ひとことを添える必要性
  • 依頼・お礼・報告など、場面別に使い分けられる締めの一言の考え方
  • ビジネスメールで使いやすい締めのフレーズ例と、言い換えのパターン
  • 調整・お断り・保留といったデリケートな場面での締め方の工夫
  • 同じフレーズを連発しないための見直しポイントと、すぐに試せる書き換えのコツ

今日からすべてのメールを変える必要はありません。
よく使う相手とのやり取りから、一通ずつ締めの一言を見直していく。
そんな小さな調整から始めることが、印象の差につながっていくでしょう。


よろしくお願いいたしますの基本ニュアンスを整理する

ビジネスメールの結びで頻出する「よろしくお願いいたします」は、一見すると決まり文句に見えます。
ただ、文として分解すると、いくつかの要素が重なっている表現だと言えるでしょう。

まず、構造を簡単に整理しておきます。

  • 「よろしく」… 今後の扱い方や対応の仕方を相手に委ねる副詞的な部分
  • 「お願いいたします」… お願いするという行為を丁寧に述べた動詞部分

この二つが合わさることで、

  • これから行うことへの依頼
  • 協力してもらいたいという期待
  • 今後も良い関係を続けたいという気持ち

といった要素を、まとめて示している表現だと捉えられます。

依頼の強さそのものは、決して強くありません。
「必ずこうしてほしい」という強い要求ではなく、「よいように取り計らっていただければありがたい」という、やや距離をとったお願いの仕方です。
そのため、ビジネスの場では、ストレートな命令形や強い依頼を避けたいときの、フォーマルな「お願いの枕ことば」として機能している側面が大きいでしょう。

では、なぜメールの結びで多用されるのか。
理由はシンプルで、用件を選ばずに使え、かつ相手との関係維持を示す一文としてちょうどよいからです。

  • 依頼メール… 今後の対応をお願いする意味で締めに使える
  • 報告メール… 報告後も引き続き関係を続ける合図として使える
  • お礼メール… 感謝を述べたあと「今後もよろしく」で関係性を示せる

このように、場面を問わず「今後も良い関係でいたい」というメッセージを、角を立てずに添えられます。
だからこそ、ビジネスメールの締めの定番として、最初に覚えられ、最後まで使い続けられる表現になっているのだと思います。

一方で、多くの場面でそのまま使えることが、後述する「事務的に見えやすい」という問題にもつながっていきます。


一文だけだと事務的になりやすい理由

「よろしくお願いいたします」は、とても便利です。
誰に対しても、どんな内容のメールでも、ほぼそのまま使えてしまいます。
その便利さゆえに、「中身のない定型文」に見えやすいという弱点も抱えています。

相手が違っても、用件が変わっても、締めが毎回同じ一文だけ。
読む側からすると、「この相手だからこその言葉」が入っていないように感じられやすいでしょう。
依頼の重さも、感謝の度合いも、状況の違いも、すべてが均一に見えてしまいます。

たとえば、次のような結びが続くとします。

  • 本件につきまして、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
  • 今後ともよろしくお願いいたします。

一通ごとに見れば失礼ではありません。
ただ、どのメールも同じ締め方だと、「とりあえず付けている一文」という印象に寄っていくはずです。

ここで効果的なのが、一言だけ情報を足すことです。
誰に向けた依頼なのか。
何をお願いしたいのか。
どうしてお願いしているのか。

このどれか一つでも短く添えるだけで、結びの文が相手に向いた表現に変わります。

例としては、

お忙しいところ恐縮ですが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
いつも迅速なご対応をありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。

といった形です。
この記事の後半では、この「一言をどこにどう足すか」を、場面別に具体的なフレーズとして整理していきます。


なぜ一言を添えると印象が変わるのか

よろしくお願いいたしますは、そのままでも失礼ではありません。
ただ、相手から見ると「こちらの状況が分かりづらい」「どれくらい大事なのか判断しにくい」と感じることもあるでしょう。

そこで役に立つのが、一言だけ情報を足す考え方です。
よろしくお願いいたしますの前後に、少しだけ背景や気持ちを添える。
それだけで、相手が状況をイメージしやすくなります。

たとえば、次のような違いがあります。

本件につきまして、よろしくお願いいたします。

本件に関する今後の流れについて、ご確認のほどよろしくお願いいたします。

後者の方が、「何を確認してほしいのか」が一目で分かるはずです。
相手は、メールの最後まで読まずとも、おおよその要点をつかみやすくなります。

一言を足すときの視点は、細かく分けすぎる必要はありません。
この記事では、次の四つの軸で考えていきます。

  • 状況を足す
  • 感謝を足す
  • 配慮を足す
  • 期待を足す

状況を添えるのか。
感謝を前に出すのか。
相手への配慮を示すのか。
今後の期待や関係性をにじませるのか。

どこを強めるかによって、同じよろしくお願いいたしますでも、印象はかなり変わっていくでしょう。
このあと紹介するフレーズ集も、どの軸が強い表現なのかを意識しながら読むと、自分のメールに合うものを選びやすくなります。


状況・感謝・配慮・期待の四つの軸

四つの軸を、具体的な一言と合わせて整理しておきます。


状況を足す一言の例

本件に関する今後の流れについて、ご確認のほどよろしくお願いいたします。

どの部分を見てほしいのか、どの場面の話なのかを短く示す役割です。


感謝を足す一言の例

お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。

忙しい中で時間を割ってもらう前提を共有し、負担を自覚していることを伝えられます。


配慮を足す一言の例

ご無理のない範囲で結構ですので、ご検討のほどよろしくお願いいたします。

今すぐではなくてもよい、強制ではない、という姿勢を示す言葉になるでしょう。


期待を足す一言の例

引き続きご指導いただけますと幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。

今回だけで終わらず、今後も継続して関わってほしいという意図を含めたフレーズです。


以後の章では、この四つの軸のうち「どれが中心になっているか」を意識しながらフレーズを紹介していきます。
自分が送りたいメールで、どの要素を強めたいのか。
その視点を持つことで、締めの一言を選ぶ作業がずっと整理されてくるはずです。


ビジネスメールで使いやすい基本パターンのひとこと

ここでは、どの部署・相手にも比較的使いやすい「汎用パターン」を押さえておきます。
まずは、依頼メールにそのまま添えられる基本フレーズ
次に、感謝や日頃の関係性を一言に込めた締め方です。

大きなポイントは二つでしょう。
何をしてほしいのかを一言で示すこと。
そのうえで、相手との関係性を一段だけ丁寧に表現すること。

この章で紹介するフレーズは、どれも「本文のあとにそのまま付け足しやすい」形にしてあります。
まずはよく使う相手とのメールから、一つずつ差し替えてみるイメージで読むと整理しやすくなります。


標準的な依頼メールに添える基本フレーズ

依頼メールの締めでは、「何をしてほしいか」が一言で分かるかどうかが重要になります。
同じよろしくお願いいたしますでも、前に置く名詞を変えるだけで、相手側の理解度は大きく変わるでしょう。

代表的には、次のようなパターンがあります。

ご対応のほどよろしくお願いいたします。
ご確認のほどよろしくお願いいたします。
ご返信のほどよろしくお願いいたします。
ご検討のほどよろしくお願いいたします。
ご教示いただけますと幸いです。

ご対応のほど〜 は、実際に動いてほしいときのフレーズです。
設定変更や処理、連絡など、行動を伴うお願いに向いています。

ご確認のほど〜 は、内容をチェックしてほしいときです。
資料、文面、条件など、「判断前の確認」を依頼するときに自然でしょう。

ご返信のほど〜 は、返事が必要な場面を明確に示します。
期日を添えて、〇日までにご返信のほどよろしくお願いいたします とすると、優先度も伝わりやすくなります。

ご検討のほど〜 は、すぐの対応ではなく「判断」を求めるお願いになります。
提案や見積もりなど、相手側での社内調整が前提になる場面で使うと、圧が強くなりにくいはずです。

最後のご教示いただけますと幸いですは、知識や見解をうかがうときの言い方です。
よろしくお願いいたしますを付けずとも、同じくらい丁寧なトーンになります。
依頼の強さはやや控えめで、「もし可能であれば教えていただきたい」というニュアンスになるでしょう。

こうして見ていくと、何を名詞に置くかで依頼の方向がはっきりします。
まずは自分のメールが「対応」「確認」「返信」「検討」のどれを求めているのかを意識してから、締めの一言を選ぶと整いやすくなります。


お礼や日頃の関係性を伝えるひとこと

依頼だけでなく、「いつもお世話になっている相手」に向けて、関係性を一段深く示したい場面もあるでしょう。
そのときは、よろしくお願いいたしますの前に感謝の一言を入れると、印象がかなり変わります。

例えば、次のような組み立てです。

日頃よりご協力いただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
いつも迅速なご対応をありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。
平素よりお力添えいただき、心より感謝しております。今後ともよろしくお願いいたします。
この度はご調整いただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

最初の一文で「何に対する感謝か」をはっきりさせる。
そのうえで、今後ともよろしくお願いいたします で関係継続の意思を添える流れになります。

毎回ここまで書くと、少し重く感じられるでしょう。
そのため、日常の短いやり取りではシンプルなよろしくお願いいたしますを使い、
大きな案件が一区切りついたときや、特に負担をかけたと感じるときにだけ、こうしたフレーズを使う。

このくらいの頻度で使い分けると、「大事な場面できちんとお礼を言える人」という印象が残りやすくなります。


依頼・お願いに添えるひとこと例(納期・負担配慮)

依頼メールで一番迷いやすいのが、納期や急ぎ具合の伝え方だと思います。
いつまでに対応してほしいのか。
どれくらい優先度が高いのか。

そのあたりが曖昧なまま、よろしくお願いいたしますだけで締めてしまうケースは少なくありません。

もう一つのポイントは、相手の忙しさへの配慮です。
お願いの内容が正しくても、言い方によっては「押しつけられた」と感じさせてしまうことがあるでしょう。
そこでこの章では、納期や重要度を簡潔に伝える一言と、相手の負担を和らげるクッション表現を組み合わせて整理します。

ここで挙げるひとことは、どれも本文の最後にそのまま添えやすい形です。
本当に急ぎの案件なのか、期限に余裕があるのか。
相手の状況に合わせて強さを調整しながら使い分けていくイメージで読んでみてください。


期限や重要度を明確にする一言

納期や重要度をぼかしたまま依頼すると、相手は「今すぐなのか、後回しでいいのか」を判断しづらくなります。
そこで、いつまでに、どの程度急ぎかを一言で示すフレーズを用意しておくとよいでしょう。

代表的な形として、次のような言い方があります。

〇日までにご対応いただけますと幸いです。
今週中にご確認いただけますと助かります。
本日中にご返信いただけますと幸いです。
お手数をおかけいたしますが、ご確認をお願いいたします。

具体的な日付を示すときは「〇日までにご対応いただけますと幸いです」の型が扱いやすいです。
期限の目安だけを示したいなら「今週中に」「明日中に」といった期間表現でも十分でしょう。

本日中にご返信いただけますと幸いですのように書くと、相手も優先度を理解しやすくなります。
その一方で、本当に当日必須かどうかは自分側で一度確認してから使った方がよい表現です。

お手数をおかけいたしますが、ご確認をお願いいたしますは、明確な期限を切らない代わりに、確認の重要性を示す言い方です。
期限と優先度がはっきりしている案件では日付を入れる。
そこまでではない場合は、このような一文で「確認してほしい」という意図を締めで再度共有すると、相手視点でも分かりやすくなるでしょう。


相手の忙しさを気遣う一言

同じ依頼内容でも、クッションになる一言があるかどうかで、受け取る印象はかなり変わります。
特に、相手が多忙なのが分かっているときや、急なお願いになってしまうときほど、負担への配慮を添えた方がよいでしょう。

よく使われるのは、次のような表現です。

お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
ご多用のところ恐縮ですが、〇日までにご対応いただけますと幸いです。
お手すきの際にご確認いただけますと助かります。
ご無理のない範囲で結構ですので、ご検討のほどよろしくお願いいたします。

お忙しいところ恐れ入りますが は、相手の忙しさを前提として理解している、というサインになります。
そのうえで依頼をしているため、同じお願いでも「一方的に押しつけられた」印象は弱まるでしょう。

ご多用のところ恐縮ですが は、ややかしこまったトーンになります。
上長や他部署の管理職に対する依頼メールなど、距離感を保ちたい相手に向いています。

お手すきの際にご確認いただけますと助かります は、急ぎではない依頼に合う言い回しです。
今すぐではなく、相手の都合に合わせてよいことを明確に伝えられます。

ご無理のない範囲で結構ですので は、検討ベースの相談や、相手の負担が大きくなりそうな案件に使いやすいでしょう。
必ず対応してほしいというより、「可能であればお願いしたい」というニュアンスになります。

依頼メールを書くときは、内容だけでなく、相手の状況や関係性も一度思い浮かべるとよいです。
期限と負担の二つの軸を意識して、一言を足すかどうかを決める。
この手順に慣れてくると、同じよろしくお願いいたしますでも、ずっと伝わりやすい文に整っていくはずです。


お礼・報告のメールで印象を深めるひとこと例

お礼や報告のメールは、つい「以上、よろしくお願いいたします」で締めてしまいがちです。
内容としては間違いではありませんが、相手から見ると「結びだけが毎回同じ」に見えることもあるでしょう。

せっかく丁寧に状況を書いたのに、最後の一文が薄く感じられてしまう。
そんなもったいない終わり方になりやすい場面です。

ここで大事になるのが、
何に対してお礼を伝えたいのか
この先どのような関係を続けたいのか

を、短い一言で添える意識です。

例えば、

この度はご対応いただき誠にありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

と締めるだけで、単なる事務的な完了報告から、「今回のお礼」と「今後も関わりたい意思」の両方が伝わります。

この章では、
お礼を強調した締めの言葉
完了報告のあとに添える一言
という二つのパターンに分けて整理します。
自分が送っているメールを思い浮かべながら、「差し替えやすい一文」を探すつもりで読んでみてください。


お礼を強調した締めの言葉

お礼メールでは、「ありがとう」がきちんと伝わっているかどうかが一番のポイントになります。
それなのに、本文で丁寧にお礼を書いたあと、最後は以上、よろしくお願いいたしますだけで終わる。
この組み合わせだと、お礼よりも「事務的な結び」の印象が勝ってしまうことがあるでしょう。

お礼をしっかり伝えたいときは、締めの文で
お礼+今後の関係
の両方を入れるとバランスが良くなります。

例えば、次のような言い方です。

この度はご対応いただき誠にありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
先日は貴重なお時間を頂戴し、誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
日頃より多大なご支援を賜り、心より御礼申し上げます。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

一文目で「何に対するお礼か」を具体的に述べる。
二文目で「これからも関係を続けたい」という気持ちをよろしくお願いいたしますで示す。
この二段構成にするだけで、印象はかなり変わるはずです。

なお、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたしますは、かなりかしこまった表現です。
上長やお世話になっている社外の方など、「今後も教えを受ける立場」である相手に絞って使う方が自然でしょう。
社内のフラットな関係には、「今後ともよろしくお願いいたします」程度の方が重くなりすぎずに収まります。


報告・完了連絡の後に添えるひとこと

報告や完了連絡のメールでも、締め言葉の選び方で印象は変わります。
報告だけで終わらせると、「情報を送って終わり」という印象に寄りやすくなるでしょう。

そこで使いやすいのが、次のようなひと言です。

引き続きよろしくお願いいたします。
今後とも変わらぬご支援のほどお願い申し上げます。
今後の運用につきましても、ご指導のほどよろしくお願いいたします。

プロジェクト完了報告のあとに、
以上、よろしくお願いいたします。
で締めると、事務的な完了通知の雰囲気が強くなります。

一方で、

おかげさまで無事に完了いたしました。引き続きよろしくお願いいたします。

と書けば、「今回が一区切りでありつつ、今後も関わっていきたい」という姿勢が伝わります。

今後とも変わらぬご支援のほどお願い申し上げますは、社外との関係で特に使いやすい表現です。
長く続いている取引や支援への感謝を含めながら、引き続きの協力をお願いするトーンになります。

社内の報告メールであれば、

引き続きよろしくお願いいたします。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

といった控えめな表現でも十分でしょう。

大事なのは、「ここで関係が切れるのか」「これからも続くのか」を、一言で示すことです。
報告・完了連絡のあとに一文添えるだけで、単なる業務連絡から、関係を意識したメッセージへと変えていけるはずです。


調整・お断り・保留のときに添えるひとこと例

日程の調整や条件のすり合わせ、お断りや保留の連絡は、相手との関係に影響が出やすい場面だと思います。
ここでのよろしくお願いいたしますは、ただの結びではなく、「これからも関係を続けたい」というサインにもなります。

一方で、伝え方を誤ると、こちらは丁寧に書いたつもりでも「一方的に押しつけられた」「断られて終わった」と受け取られることもあるでしょう。
だからこそ、調整やお断りのメールでは、よろしくお願いいたしますに至るまでの一言が重要になります。

この章では、
日程や条件をすり合わせるときに使いやすいひとこと
お断りや保留の後に添えるフォローのひとこと

という二つの場面に分けて見ていきます。
どちらも、単にお願いするだけでなく「相手の選択肢」や「今後の関係」を意識した言い方がポイントになります。


日程・条件調整の場面で使える一言

日程や条件の調整では、自分の希望だけを書いてよろしくお願いいたしますと添えると、どうしても一方的な印象になりやすいです。
相手にとっても選びやすいように、「こちらの希望+相手の選択肢」をセットで示すと、受け取り方が変わってきます。

例えば、次のような言い回しがあります。

別日程をご提案できればと存じます。
ご都合のよろしい日時をご教示いただけますと幸いです。
上記以外にご都合の良い候補日がございましたら、お知らせいただけますと幸いです。
この条件でご検討いただけますと幸いです。

別日程をご提案できればと存じます は、「今の案では難しいが、代案を出したい」という姿勢を示す言い方です。
そのあとに具体的な候補日を挙げ、最後によろしくお願いいたしますと締める流れにすると、単なるキャンセルではなく「すり合わせを続けたい」印象になります。

ご都合のよろしい日時をご教示いただけますと幸いです は、相手に選択を委ねる形です。
こちら側の候補を出せない場合や、相手のスケジュールが読みにくい場合に向いているでしょう。

この条件でご検討いただけますと幸いです は、条件提示のときに使える一文です。
要求だけを述べると硬くなりますが、「ご検討」という言葉を使うことで、最終判断は相手側にあることを示せます。

日程や条件の調整では、
こちらの希望だけを書く
相手の選択肢も一緒に示す

どちらのスタンスになっているかを一度確認した方がよいでしょう。
そのうえで、最後をよろしくお願いいたしますで締めると、交渉ではなく「一緒に調整していく」印象に近づいていきます。


お断りや保留の後に添えるフォローの一言

お断りや保留の連絡は、内容そのものが否定的になりやすい場面です。
そのため、よろしくお願いいたしますをどう添えるかで、今後の関係が変わることもあるでしょう。

まず、ストレートなお断りの典型として、次のような文があります。

今回の件につきましては、見送らせていただきたく存じます。

ここで終わらせると、「関係もここで終わる」という印象を与えかねません。
そこで、次につながる一言を足しておくと、受け取る側の印象がやわらぎます。

例えば、

今回の件につきましては、見送らせていただきたく存じます。今後また機会がございましたら、よろしくお願いいたします。

このように書くと、
今回は難しいが、関係自体を切りたいわけではない
というメッセージになります。

保留の連絡でも、同じ考え方が使えます。

現時点では社内調整中のため、回答を保留とさせていただきたく存じます。結果が分かり次第、あらためてご連絡申し上げますので、よろしくお願いいたします。

保留の理由と、次の動きが分かる一文を挟んでから、よろしくお願いいたしますで締める。
これだけでも、相手は「待てばよいのか」「別の対応が必要なのか」を判断しやすくなります。

否定的な内容を伝えるときは、
何を断る(保留する)のか
なぜそうせざるを得ないのか(必要な範囲で)
今後どうしたいのか

この三つを意識してから、最後の一言を選ぶとよいでしょう。
そのうえで、今後また機会がございましたら〜、別の形でお力になれれば幸いです、などのフォローを添えつつ、よろしくお願いいたしますで締めると、関係を大切にしている姿勢が伝わりやすくなります。


メール・チャット・口頭での使い分けと一文例

同じよろしくお願いいたしますでも、メール、チャット、口頭では「ちょうどよい丁寧さ」が変わります。
媒体ごとに求められる長さや形式が違うので、その差を意識できると結びの言葉も選びやすくなるでしょう。

ビジネスメールでは、文章として形を整えた締め方が基本になります。
一方で、社内チャットやツールでは、やや短めでも失礼にはあたりません。
口頭の場合は、言葉そのものに加えて、声のトーンや間の取り方も含めて印象が決まっていきます。

この章では、
メールでの基本形
チャットでの軽めのアレンジ
口頭でのひとことの添え方

という三つに分けて、一文の例と考え方を整理します。


ビジネスメールでの締め方の基本

ビジネスメールでは、本文のトーンと結びの丁寧さをそろえることが大切です。
本文がかしこまっているのに、締めだけ急にくだけると違和感が出やすいでしょう。

例えば、次のような結び方があります。

本件につきまして、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
お忙しいところ恐れ入りますが、ご対応のほどよろしくお願いいたします。
引き続きご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

いずれも、文として完結しているのがポイントです。
「何について」「どのようなお願いをしているのか」が一文ではっきり示されています。

長すぎる結びは、読み手にとって負担になる場合があります。
感謝、説明、依頼が一文に詰め込まれると、最後まで読まれないこともあるでしょう。

一方で、短すぎる結びも事務的に見えやすくなります。

以上、よろしくお願いいたします。

のように、本文の要約がなく、締めだけが残る形です。
メールの結びとしては使われますが、頻度が高いと「とりあえずの一文」に感じられることもあります。

目安としては、
本文の最後で要点を一度しめくくる
そのあとに一文でお願いや感謝を添える

この二段構成にしておくと、長すぎず短すぎず、整った印象になりやすいと言えます。


社内チャットやツールでの一言アレンジ

社内チャットや業務ツールのメッセージでは、メールほど形式を整える必要はありません。
ただ、簡略形に寄せすぎると、ぶっきらぼうに感じられることもあります。

使いやすい例として、次のような書き方があります。

ご確認よろしくお願いします。
ご対応いただけると助かります。
お手すきのときに見ていただけると助かります。
よろしくお願いします 助かります。

チャットでは、「お願いいたします」より「お願いします」の方が自然な場面が多いでしょう。
そのうえで、助かります、助かりますと幸いです などを足すと、依頼の圧が下がり、協力をお願いしているトーンになります。

一方で、
よろしくです
よろです
といった略し方は、フラットな同僚同士なら成立する場合もありますが、上司や他部署のメンバーがいる場では避けた方が無難です。

チャットでは、
文の長さは短め
敬語のレベルは「メールより一段弱め」程度
このあたりを意識しておくと、崩しすぎずに軽さを出せるでしょう。


口頭で添えるひとことの工夫

電話や対面でのよろしくお願いいたしますは、言葉だけでなく、声のトーンや間の取り方も含めて伝わります。
同じ言い回しでも、早口で一気に言うと、事務的な印象になりやすいでしょう。

例えば、次のような言い方があります。

今後ともよろしくお願いいたします。
本件につきまして、どうぞよろしくお願いいたします。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

電話では、最後のよろしくお願いいたしますの前に、少しだけ間を置くと、締めの一言として聞こえやすくなります。
対面では、相手の目を見るか、軽く会釈をしてから伝えると、ていねいさが補われます。

また、状況によっては、あえて別の言葉を選んだ方が自然な場面もあります。

ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
本日はありがとうございました。またよろしくお願いいたします。

感謝をしっかり伝えたいときは、先にありがとうございましたを置き、そのあとによろしくお願いいたしますを続ける形が基本になります。
口頭の場面では、一言を足すというより、「どの順番で言うか」を意識すると、締めの印象が整いやすくなるはずです。


避けたい締めの言葉と見直しのポイント

便利なフレーズほど、気づかないうちに使いすぎることがあります。
よろしくお願いいたしますもその一つだと思います。

一通のメールの中で何度も出てきたり、本文の内容があいまいなまま結びだけが丁寧だったり。
こうした使い方が続くと、ていねいさよりも「型どおり」「中身が伝わらない」という印象が強くなるでしょう。

この章では、避けたいパターンを二つに分けて整理します。
一つは、同じ表現の連発で大事なお願いがぼやけてしまうケース
もう一つは、何をしてほしいか分からない結び方になっているケースです。

どちらも、少しの書き換えで印象が変えられます。
NG例と改善例を見比べながら、自分のメールでも置き換えられそうなところを探してみてください。
最後に、ことのは先生から簡単なコメントも添えます。


同じフレーズの連発で伝わりにくくなる例

一通のメールの中で、よろしくお願いいたしますが何度も出てくることがあります。

例として、次のような文です。

本件につきまして資料を共有いたしますので、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
なお、スケジュール変更の可能性もございますので、その際はあらためてご連絡いたします。今後ともよろしくお願いいたします。

一見して問題はなさそうに見えます。
ただ、やり取りが続く中で毎回この調子だと、「どこが本当にお願いしたいポイントなのか」が分かりにくくなるでしょう。

たとえば、次のように変えることができます。

本件につきまして資料を共有いたします。まずは内容をご確認いただけますと幸いです。
なお、スケジュール変更の可能性もございます。その際はあらためてご連絡いたしますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

前半では「確認してほしい」ことに集中させ、
後半では「今後のやり取り」を意識した結びに分けています。

同じよろしくお願いいたしますをそのまま繰り返すのではなく、

  • 一度目は「何をしてほしいか」に結びつける
  • 二度目以降は「今後の関係」や「継続的なやり取り」に結びつける

という意識を持つと、文の役割がはっきりしてきます。
同じ語句を連発しそうなときは、一度だけに絞り、もう一方は別の表現に言い換えるのがよい目安になります。


あいまいな結びを具体的に言い換える

次によくあるのが、結びの一文があいまいで、「結局何をすればいいのか」が伝わらないパターンです。

よく見かけるNG例として、次のような形があります。

以上、ご確認のほどよろしくお願いいたします。

一文だけでは、どの部分をどのように確認すればよいのかが見えにくいでしょう。
本文で十分に整理されていればまだよいのですが、そうでない場合は、受け手の負担が大きくなります。

改善例を挙げると、次のようにできます。

以上、添付の見積書の内容につきまして、ご確認いただけますと幸いです。

確認してほしい対象を「添付の見積書の内容」と一言足しています。
これだけで、相手はメールを開いた瞬間に、自分の役割を把握しやすくなります。

もう一つ、期限があいまいな例です。

ご対応のほどよろしくお願いいたします。

これもよく使われますが、期限が重要な案件ではそのままだと危うい場面もあるでしょう。

期限を含めると、次のように変えられます。

お手数をおかけいたしますが、〇日までにご対応いただけますと幸いです。

何をしてほしいのか。
いつまでに必要なのか。
どこに感謝しているのか。

この三点のうち、少なくとも一つは結びの一文に入れる意識を持つと、あいまいさが大きく減らせます。
一度書いたあとで、「この一文だけ読んでも、相手は動けるか」を短く確認すると、修正ポイントが見つけやすくなるはずです。


ことのは先生よりひとこと

ことのは先生
ことのは先生

結びの一言は、相手との関係がにじむ場所です。
型どおりの文を並べるだけで終わらせず、「誰に」「何を」お願いしているのかを一言で添えてみてください。
小さな書き換えでも、受け取る側の印象は少しずつ変わっていきます。

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